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センスがいい方への贈り物に。最高賞を受賞した「和歌」がテーマのバラ

2023.07.07

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藤野幸信さんが選ぶ「季節の贈り花」 今、この花を贈りたい! 「フルール トレモロ」オーナー 藤野幸信さんが“今贈りたい”おすすめの花をセレクト。その花を使った、新作ブーケ&アレンジメントをさまざまなバリエーションでお届けします。記事一覧はこちら>>

7月の花「バラ‘和歌’シリーズ」




ブーケと一緒にワインを贈りたいというオーダーです。鮮やかな赤バラの‘唐紅’をバイカラーのアスター‘ココットマーブルレッド’と合わせてブーケに。よく冷やしたワインとともに夏の赤いブーケを楽しんで。ほかにケイトウやキイチゴなども加えています。

和歌にインスパイアされたバラの風情ある姿に魅了!


贈り花で一年を通して活躍してくれるのがバラです。すばらしい品種が豊富に揃う中から、今回は‘和歌’シリーズを紹介します。


このバラを生み出しているのは、佐賀県の太良町にある「ファインローズ」というブランドのバラ農家グループに所属する「石川華園」さん。ご主人の石川栄次さんがバラの花粉から交配したタネから育種をし、奥さまの奈津子さんがプロデュースをしています。

お二人が新たな挑戦として手がけているのが、和歌の世界観を表現した‘和歌’シリーズです。‘唐紅’‘ちはやぶる’‘珠繭(たままゆ)’‘春霞’…。花名を聞くだけで、どんなバラなのか見てみたくなるでしょう!

‘唐紅’という鮮やかな赤のスプレーバラが、2021年の「第63回日本ばら切花品評会」で最高賞である「農林水産大臣賞」を受賞したことで、‘和歌’シリーズは花屋さんの間で大人気となり、出荷待ちの状態が続いています。

じつはこの受賞の知らせを私はクルーズトレイン「ななつ星」の車中で聞きました。家庭画報×ななつ星のコラボツアーで大分、宮崎、鹿児島を周遊する旅です。

列車内に飾る花とワークショップを担当し、旅先に合わせて九州産の花を飾っていて、ちょうど‘唐紅’も使っていたので、スタッフの方に受賞の話をしたら、ゲストの方々にも知らせてくださり、みなさんから大きな拍手をいただき、まるで私が受賞したみたいにうれしくなりました。


‘唐紅’の艶やかな赤と光沢のある葉の組み合わせは、どこかツバキを連想させ、より和の趣を強く感じさせます。

「千早ぶる神代も聞かず竜田川からくれないに水くくるとは」

これは『古今和歌集』に収録された在原業平の歌で、百人一首でもおなじみです。新しく生まれた鮮やかな赤バラに‘唐紅’と名づけた奈津子夫人は、別の濃いピンクのバラに上の句から‘ちはやぶる’をとって名づけています。

名前を聞いただけで、ストーリーを感じさせ、世界が広がる、そんなプロデュースを手がける奈津子夫人のセンスのよさには本当に感服です。花名はインスタグラムのフォロワーなどから募集しているのですが、どれも花姿に絶妙に似合う名前で、それも‘和歌’シリーズの人気を高めていると思います。

そして、奈津子夫人からのお声がけで私も花名を考え、‘和歌’シリーズの‘珠繭’と‘紅重(べにがさね)’、2品種の名づけ親となりました。自分が考えた名前のついたバラにはとても愛着がわくもので、出荷の時期には決まってオーダーを入れています。



光栄にも私が花名をつけさせていただいた‘珠繭’。わずかにグレイッシュがかったペールトーンの花色を見たとき、まず思い浮かんだのが蚕の繭のイメージ。ちょうど博多織の工房を訪ねた直後で、生糸を生み出す蚕に興味を抱いていたからです。『万葉集』の中にイメージに似合う歌がないかと探して見ると、恋心を詠んだ素敵な歌がありました。「筑波嶺(つくばね)の新桑繭(にいぐわまよ)の衣(きぬ)はあれど君が御衣(みけし)しあやに着欲しも」。玉繭とは2頭の蚕が共同で1個の繭を作り上げたもの。高貴な絹のようにつややかな花色にふさわしい花名ではないかと自画自賛しています。

‘和歌’シリーズはいずれも中小輪が5輪ほどつくスプレータイプで、贈り花にも使いやすいバラです。枝分かれが自然でしなやかで、蕾、開きかけ、満開と、1本に異なる咲き加減がミックスするため、ブーケにするととてもナチュラルな雰囲気が楽しめます。

日もちのよいバラなので、この時期の贈り花でも安心して利用できます。「石川華園」さんでしか生産されていないので、出荷量に限りがあるのですが、1年を通して何かしらの品種が出回ります。タイミングよく入荷していたらラッキー!和歌の世界を感じさせるバラを大切な方へ贈ってみてください。

藤野幸信/Yukinobu Fujino

広島駅からほど近い段原の骨董通りにある「fleurs trémolo」(フルール トレモロ)オーナー。広島大学大学院理学研究科生物科学専攻を終了後、花の道に進んだ異色の経歴。感動する花束を多くの人に届けたいという思いから、市場からだけでなく自ら生産者情報を入手してお気に入りの花を集める。何種類もの花を使ったブーケは、エレガントでナチュラル。著書『大切な人への贈り花』も好評。 https://www.fleurs-tremolo.com

『人気フローリストが教える フラワーアレンジのデザイン&ヒント78 大切な人への贈り花』
誕生日、結婚記念日、ウエディングなど、78例のブーケ&アレンジメントを色別に掲載したオールカラーの大判の単行本。色別花図鑑コラムや全国の生産者データなどお役立ち情報やインデックスも充実。大切な人へ花を贈る際のヒントが満載です。
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