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追悼・扇千景さん 第2回「感謝に尽きる祖母の教え」中村壱太郎さん

2023.07.26

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【追悼】2人の息子と2人の孫が語る 偉大な女性(ひと)扇 千景 第2回(全4回) 女優から政治家へと転身し、歌舞伎役者の妻の務めも果たした扇 千景さんが2023年3月にご逝去なさいました。その人生をご家族の言葉を通して偲びます。前回の記事はこちら>>
扇千景さんの遺影

扇 千景
1933年兵庫県生まれ。県立神戸高校を卒業。宝塚音楽学校を経て女優となる。1958年歌舞伎俳優2代目中村扇雀(4代目坂田藤十郎・人間国宝)と結婚。女優業、『3時のあなた』の司会等を務め、1977年参議院議員初当選。以後国政に励み、数々の要職を歴任。2001年1月初代国土交通大臣就任。2004年に女性初の参議院の議長に選出される。2007年に政界を引退。2010年に女性初の桐花大綬章を受章。2023年3月9日に死去。

感謝に尽きる祖母の教え


中村壱太郎



祖父の誕生日が12月31日だったことから、家族で大晦日に墓参りをして元日をともに過ごすのは、恒例の行事でした。祖父亡き後もそれは続き、昨年の大晦日も同じように集まって食事をしました。祖母はとても元気でしたが、元日は少し具合が悪そうでした。性格的に我慢強い人だったのでつらいとか痛いと言葉にすることはなかったのですが、我々家族も祖母の異変には少し気づいていた感じはあるかもしれません。

それからわずか2か月ほどで祖母は旅立ちました。僕は京都南座の公演に出演中だったので最期を看取ることはできませんでしたが、亡くなった日が休演日だったので、お別れの挨拶はすることができました。

祖父が亡くなってからは祖母と2人で食事に出かけ、芝居やこれからの仕事をどうやっていくかなど、いろいろと相談しました。祖母には長年つき添っていた秘書のかたがいたことから、僕にも支える人が必要だともアドバイスしてくれました。祖母は毎日3紙ほど新聞を読んでいたので「社説だけは読みなさい」とよくいわれ、そうしたやるべきことの多くを学ばせてもらいました。

字も断トツにきれいでしたから、何かあればお願いして書いてもらうこともありました。国土交通省の看板に揮毫したのも、初代大臣を務めた祖母です。引退してからは一切活動しないことに徹している姿も格好よかったと思っています。

祖父には敬語でしか話せませんでしたが、祖母にはタメ口が使える “おばあちゃん” でした。でも、人の心を動かせる言葉をかけたり、統率力があったり、接する度にその凄さは感じました。わが一家は祖父母という2本の柱があってこそ成立していたので、ありがとうという思いを伝えたいです。

扇 千景さんのご遺族

増上寺で行われた本葬前にマスコミの取材に応じる息子たち。右から孫の中村壱太郎さん、長男の中村鴈治郎さん、次男の中村扇雀さん、孫の中村虎之介さん。

扇 千景さんの祭壇

祭壇では胡蝶蘭、スプレーマム、カーネーション、バラ、トルコギキョウなどで扇が表現された。上段には遺骨と位牌とともに天皇陛下からの「祭粢(さいし)料」が供えられ、中段には旭日大綬章や女性で初めて受章した桐花大綬章、従二位の位記が飾られた。撮影/岡積千可

〔特集〕【追悼】2人の息子と2人の孫が語る 偉大な女性(ひと)扇 千景(全4回)

構成・文/山下シオン

『家庭画報』2023年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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