若手の女方として注目されている中村児太郎さんが7月の歌舞伎座で娘役の大役『神霊矢口渡』のお舟に挑む。
「2019年12月に歌舞伎座『神霊矢口渡』で(中村)梅枝さんがお舟を演じられたとき、僕はうてなの役で同じ舞台に立たせていただきました。そのときいつか僕もお舟を演らせていただくかもしれないと思い、梅枝さんのお舟がとても素敵だったので息づかいや動きを間近に見ることで学ばせていただきました。
お舟は一晩泊めてくれとやってきた新田義峯に一目ぼれします。そして義峯には傾城うてなという恋人がいるのにもかかわらず、全く気にせずに猛烈にアタックしていくという愛情の強い激情型の女性で、ほかの娘役にはないものがあります。先輩がたが継承してきた義峯を口説くお舟の“クドキ”といった型はしっかりと稽古をして踏襲しつつ、現代の女性の恋愛感情にも通じるお舟という人間の気持ちを演じることを目指します」
『神霊矢口渡』の娘お舟。©松竹本作は蘭学者として知られている平賀源内が福内鬼外という筆名で書いた浄瑠璃で代表作でもある。クドキの詞章には科学に精通した源内らしい表現も登場する。児太郎さんが考える見どころについても伺った。
「お舟がほぼ出っぱなしで、後半には強欲な自分の父である頓兵衛から義峯を救おうとして対決するほど自分の思いを貫きます。父親に手をかけられながらも、落人を生け捕った合図として太鼓を打ち鳴らすところまで到達しなければなりません。義峯、うてな、六蔵、頓兵衛のそれぞれの役にある葛藤や思いもぜひご覧いただきたいです」
中村児太郎
1993年東京都生まれ。父は9代目中村福助。2000年歌舞伎座で、6代目中村児太郎を襲名し、初舞台。2018年には『壇浦兜軍記 阿古屋』の琴、胡弓、三味線を演奏する遊君阿古屋という難役を戦後最年少である24歳で勤めた。
今月の歌舞伎
【歌舞伎座】
歌舞伎座新開場十周年 七月大歌舞伎
~2023年7月28日
●昼の部 11時開演
三代猿之助四十八撰の内
通し狂言『菊宴月白浪 忠臣蔵後日譚』
●夜の部 16時開演
一、『神霊矢口渡』 二、『神明恵和合取組 め組の喧嘩』 三、新歌舞伎十八番の内『鎌倉八幡宮静の法楽舞』
※中村児太郎さんは夜の部『神霊矢口渡』の娘お舟役で出演します。
1等席1万8000円ほか
チケットホン松竹:0570-000-489
【新橋演舞場】
新作歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』
2015年に配信され、世界的な人気を誇るゲーム「刀剣乱舞ONLINE」がミュージカル、舞台、映画に続き、歌舞伎として上演される。出演は尾上松也、尾上右近、中村鷹之資、中村莟玉、上村吉太朗、河合雪之丞、大谷龍生、中村歌女之丞、大谷桂三、中村梅玉ほか。
〜2023年7月27日
昼の部 12時開演/夜の部 16時30分開演
※21日、24日、25日は昼の部のみ。
1等席1万5000円ほか
チケットホン松竹:0570-000-489
【大阪松竹座】
大阪松竹座開場100周年記念 七月大歌舞伎
『俊寛』片岡仁佐衛門。©松竹~2023年7月25日
●昼の部 11時開演
一、『吉例寿曽我』 二、『京鹿子娘道成寺』 三、『伊賀越道中双六 沼津』
●夜の部 16時開演
一、『平家女護島 俊寛』 二、『吉原狐』
出演は片岡仁左衛門、中村鴈治郎、中村扇雀、坂東彌十郎、片岡孝太郎、松本幸四郎、尾上菊之助ほか。
一等席1万8000円ほか
チケットホン松竹:0570-000-489
表示価格はすべて税込みです。
撮影/岡積千可 構成・文/山下シオン ヘア&メイク/AKANE
『家庭画報』2023年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。