歌とベースで魅せる
©Yuji Watanabeジャズ界の新星として注目される、石川紅奈。あたたかい音色を持つ大きな楽器、ウッドベースを繊細に歌わせ、自らも柔らかく温もりある声で歌う。
高校時代、ジャズバンド部に入った際にベースを本格的に始めた。その後、練習の過程でメロディを歌いながら弾き始め、やがて歌唱も学んで、今のスタイルに行き着いたという。
彼女が注目されたのは、コロナ禍のなかピアニストの小曽根 真と俳優の神野三鈴が始めた若手音楽家のための企画「From OZONE till Dawn」のライブ演奏動画がきっかけ。
マイケル・ジャクソン「オフ・ザ・ウォール」の弾き語り映像は、ジャズでは異例の186万回超再生され、国内外から絶賛コメントが寄せられた。そして今回、名門ヴァーヴからデビューを果たした。
大胆なアレンジが加えられたカヴァー曲では、ウッドベースの魅力が存分に伝わる。
また、クラゲの動画を見ながら書いた「シー・ワスプ」、日本で働くベトナム人女性の実話に基づく映画から着想を得たという日本語歌詞の「No One Knows」など、オリジナル曲でもみずみずしい感性を発揮する。その音楽は、心地よく、同時に心を軽やかに弾ませてくれる。
石川紅奈(いしかわ・くれな)埼玉県出身。小曽根 真に見出され、国立音楽大学ジャズ専修で研鑽を積んだ。ジャズベースを井上陽介、金子 健に、ヴォーカルを高島みほに師事。ベース、ベースボーカルとして演奏活動を行う。ピアニスト壷阪健登とのユニット「soraya」としても活動。 編集部おすすめ
[CD]
石川紅奈『Kurena』
UCCJ-2221 2530円オリジナル曲とカヴァー曲が3曲ずつ収録され、ベーシスト、ヴォーカリストとしてだけでなく作編曲家としての才能があることも伝わる、デビュー・ミニ・アルバム。マイケル・ジャクソン「オフ・ザ・ウォール」の弾き語りに加え、彼女の音楽性に多大な影響を与えたスティーヴィー・ワンダーやチック・コリアを大胆なアレンジで届ける。レコーディングには作品のプロデュースも務めた小曽根 真をはじめ、大林武司、苗代尚寛、小田桐和寛、Kanなど精鋭ミュージシャンが参加。
[収録曲]
「シー・ワスプ」、「500マイルズ・ハイ」、「バード・オブ・ビューティー(美の鳥)」、「オレア」、「オフ・ザ・ウォール」、「No One Knows」
表示価格はすべて税込みです。
構成・文/高坂はる香
『家庭画報』2023年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。