1回で決めるのがプロ
中井さんが篠山さんに撮ってもらうのは2回目。前回はわずか2枚で終わり、感服したといいます。
「実は今回はドラマの撮影もあり、マネージャーからは“よい企画だと思いますけど、今回は無理です”といわれたんですが、僕は頑としてやるといったんです。
まだ仕事に就いて日の浅いマネージャーに、本当によいカメラマンの仕事というものを見せたかった。彼が“そんなに違うんですか”と聞くから“まったく違う”といいました。今、数打ちゃ当たるみたいな撮影があたり前に思われているけれど、そうじゃないことがわかるぞ、と。
篠山さんはその瞬間に集中して、いいのが撮れたと思ったら、さっと終わるでしょう? それは僕らの商売の根本にある大切なことで、プロは1カット、1シーンに勝負をかけなければならないんです。何回も撮ってあとから編集してもらうというのは違う。
今のテレビ界では“今度はこっち側から撮るから頭から全部やってください”といわれて同じ演技を繰り返したりしますが、人間の集中力、想像力はそんなに持たないですよ。プロなら何回もできるだろうという考え方が間違いで、1回で決めるのがプロ。そういうことを伝えていかなければと思っています」
そう厳しい表情で語った中井さんが現在没頭しているのが、3月21日スタートの主演ドラマ『記憶』。
大量のセリフを日々覚えなければならない状況下でわかったのが、「人間の脳は年を取っても鍛えられるということ」だといいます。
「声に出して文章を読むのもいいそうです。ご主人のため、奧さまのために本を読んであげるなんていうのも脳トレにいいと思いますよ」とにっこり。最後は再び、ダンディな笑顔を見せてくれました。
中井貴一/Kiichi Nakai
1961年東京都生まれ。1981年に映画『連合艦隊』でデビュー、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。一世を風靡したドラマ『ふぞろいの林檎たち』で人気を博す。大ヒット作『最後から二番目の恋』や1月に放送されたドラマ『娘の結婚』の名演も記憶に新しい。そのほか舞台やナレーションでも活躍。認知症の弁護士を演じる連続主演ドラマ『記憶』が放送中。
連続ドラマ『記憶』中井貴一さんが若年性アルツハイマーの弁護士を演じる連続ドラマ『記憶』は、大ヒットした韓国ドラマをリメイクした作品。共演は松下由樹、優香、泉澤祐希、今田美桜ら。3月21日からフジテレビNEXTライブ・プレミアムとJ:COMプレミアチェンネルで同時に放送中。
http://www.kioku-drama.jp/ 撮影/篠山紀信 スタイリング/馬場郁雄 ヘア&メイク/藤井俊二 取材・文/清水千佳子 中井貴一さんが華麗に宙を舞った「今、輝く男性が着るパリミラノ」は、『家庭画報』4月号に掲載されています。本誌の詳細、ご購入は
こちらから!