クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第1回 ヨハン・パッヘルベル『パッヘルベルのカノン』
皆さんこんにちは。今日から1年間にわたって、1日1曲クラシックの名曲を紹介していきます。作品の背景には、作曲者の思いや作品にまつわるエピソードが満載です。それを知れば、ちょっとお堅いイメージのクラシック音楽が、きっと身近に感じられることでしょう。レッツ・エンジョイ・クラシック!
イラスト/なめきみほ
黄金のコード進行を生み出したバロックの人気曲
今日9月1日は、バロック時代の作曲家、ヨハン・パッヘルベル(1653~1706)の受洗日です。
パッヘルベルは、17世紀後半のドイツを代表するオルガンの名手で、ドイツ・バロック音楽の発展に大きく寄与した人物です。代表作として名高い『パッヘルベルのカノン』の正式名称は『3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグニ長調』。この中のカノンを抜き出した同曲は、さまざまな楽器のために編曲されて親しまれる人気曲です。
作品の中で繰り返される8つの音は「カノン進行」と呼ばれ、山下達郎の『クリスマス・イヴ』やビリー・ジョエルの『ピアノ・マン』、中島みゆきの『糸』などなど、多くの音楽に生かされる黄金のコード進行です。今から370年前の今日受洗したパッヘルベルは、人の心を掴む音の動きを知っていたのでしょうね。
ただし、現在一般的に知られるパッヘルベル作品はこの曲のみ。まさに、クラシック界における“究極の一発屋”といえそうです。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。