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追悼・扇千景さん 第4回「人生のよきお手本」中村扇雀さん

2023.08.09

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【追悼】2人の息子と2人の孫が語る 偉大な女性(ひと)扇 千景 最終回(全4回) 女優から政治家へと転身し、歌舞伎役者の妻の務めも果たした扇 千景さんが2023年3月にご逝去なさいました。その人生をご家族の言葉を通して偲びます。前回の記事はこちら>>
扇 千景さんの遺影

扇 千景
1933年兵庫県生まれ。県立神戸高校を卒業。宝塚音楽学校を経て女優となる。1958年歌舞伎俳優2代目中村扇雀(4代目坂田藤十郎・人間国宝)と結婚。女優業、『3時のあなた』の司会等を務め、1977年参議院議員初当選。以後国政に励み、数々の要職を歴任。2001年1月初代国土交通大臣就任。2004年に女性初の参議院の議長に選出される。2007年に政界を引退。2010年に女性初の桐花大綬章を受章。2023年3月9日に死去。

人生のよきお手本


中村扇雀



母が亡くなってから改めて『夫婦の履歴書』を読み返しました。母は銀行員の娘として生まれ、大学に進学したいという思いは叶いませんでしたが宝塚音楽学校に合格して、宝塚歌劇団に入ります。自分が思い描いていた人生とは違ったようですが、 “これがしたい”、“あれもやりたい” とどんどん実現させた人。89歳で亡くなりましたが、自分がやりたいと思ったことを成し遂げて天寿を全うしたと僕は思っています。

僕たち兄弟が子どもの頃は、兄貴と僕の世話をそれぞれ担当するかたとお料理を担当する3人のお手伝いさんが同居していました。母性の部分よりも自分がこうありたいという生き方を貫く意志のほうが強くてそれを優先したのだと思います。その一方で自分が培った人脈を駆使して父を陰で支えていました。表には出さずにやっていたことで、僕はその姿を客観的に見てきて、人生の先輩としていいお手本だと思っていました。

父と兄貴は血液型がO型で僕と母はB型だったのですが、僕はどちらかというと母に考え方がわりと似ていたと思います。決断力だったり、行動力だったり。自分の思ったことを表にさらけ出すタイプではなかったので、推察しなければならない面がありました。身の回りのものの整理をしたときに細かくいろんなことをメモしているのを目にしたことがあります。

また筆まめな人だったので手紙を書くのが好きでした。小学生の頃に、母から預かった手紙を先生に渡したところ、達筆すぎて読めないから一緒に解読してくれといわれたこともありました(笑)。

そして僕自身も60歳を超えたので、両親が亡くなったことで、やっと “子どもの親” になれた気がしています。これから30年、役者として舞台に立つことをイメージして、3年おきにそのプランを作り直して歩んでいきたいと考えています。

扇 千景さんのご遺族

増上寺で行われた本葬前にマスコミの取材に応じる息子たち。右から孫の中村壱太郎さん、長男の中村鴈治郎さん、次男の中村扇雀さん、孫の中村虎之介さん。

扇 千景さんの祭壇

祭壇では胡蝶蘭、スプレーマム、カーネーション、バラ、トルコギキョウなどで扇が表現された。上段には遺骨と位牌とともに天皇陛下からの「祭粢(さいし)料」が供えられ、中段には旭日大綬章や女性で初めて受章した桐花大綬章、従二位の位記が飾られた。撮影/岡積千可
構成・文/山下シオン

『家庭画報』2023年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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