舞台を中心に女優として活躍する松本紀保さんが、自らプロデュース・出演する舞台公演の第2弾が、4月に新宿で上演されます。
妻からの一方的な申し出で離婚した夫婦を軸に、一筋縄ではいかない大人の人間模様を描き出す新作『Farewell(フェアウェル)』です。
進取の気風で知られる高麗屋に生まれ、父・松本幸四郎(現・白鸚)氏の演出助手も務めた実力派に、意気込みなどを伺いました。
――2014年11月に上演した『海と日傘』(作/松田正隆 演出/青山 勝)から約3年ぶりに、プロデュース公演を打たれる紀保さん。プロデュースに乗り出したそもそものきっかけは、何だったのでしょう?
「10年ほど前に『海と日傘』の戯曲に出合ったことです。読んですっかり好きになってしまって、いつかこの作品を演じたいと思うようになりました。それを周りの人にも話しているうちに、“そんなにやりたい気持ちがあるのなら、自分でプロデュース公演を打つという形でやったらどう?”と言われて、やってみようかなと。だから当初は、1回限りのつもりだったんです。せっかくなら、続けられる限りは続けていこうと思ったのは、『海と日傘』をやり終えた後でした」
――第2弾となる今回は、その『海と日傘』に役者として出演されていた、作・演出家の松本哲也さんによる新作です。
「松本さんとは『海と日傘』への出演オファーで知り合いました。その時に、自分でも『小松台東』という劇団を主宰して、作・演出をしていると聞いて観に行ったのが、書き下ろしをお願いしたいと思ったきっかけです。その気持ちは、それから松本さんの作品に出演させてもらったり、松本さんが外部に書かれた違うテイストの作品を観に行ったりするうちに、どんどん強まりました。私自身が忙しかったこともあって、第1弾から随分間は空いてしまったんですが(苦笑)、3年の間に松本さんの活躍の場や作品の幅も広がって、お互いにとっては、かえってよかったのかなと思っています」
――ミュージカル映画『NINE』(2009年ロブ・マーシャル監督)や、その原作となった映画『8 1/2』(1963年フェデリコ・フェリーニ監督)に想を得た作品になるそうですね。
「せっかくなら『小松台東』とは違ったものがいいなと思った時に、頭に浮かんだのが、その2本でした。私の印象として、松本さんは兄妹とか父娘というような、近しい間柄にある男女の心の機微みたいなものを書くのが上手だなと思っていたので、今回はもうちょっと踏み込んだ、肉親以外の大人の男女の関係を、男の人を主軸に書いてもらえたらなと。『ふたりの5つの分かれ路』という、ある夫婦の関係を離婚から出会いへと遡りながら描いていくフランス映画(2004年フランソワ・オゾン監督)の話もしましたね」