クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第3回 フェリックス・メンデルスゾーン『夏の夜の夢』
イラスト/なめきみほ
世界中の新郎新婦を祝福し続ける“幸福の音楽”
今日9月3日は、「ドラえもん」の誕生日です。
アニメのオープニングテーマ『ドラえもんのうた』はウィーン少年合唱団のレパートリーとして有名ですが、更にクラシックとの結びつきはないかと調べたところ、1996年の映画『ドラえもんとのび太の銀河超特急』に、メンデルスゾーン(1809~1847)の劇音楽『夏の夜の夢』が使われていることを発見。「序曲」を筆頭に「スケルツォ」「妖精たちの行進」「結婚行進曲」が登場するのはうれしい驚きです。
メンデルスゾーンが手がけたシェイクスピアの戯曲『夏の夜の夢』のための音楽は、『ヴァイオリン協奏曲』と並ぶ彼の代表作です。17歳で作曲した「序曲」の完成度は早熟の天才メンデルスゾーンならでは。その17年後に、「序曲」を気に入ったプロイセン王からの勅命によって全曲を完成させる経緯も、メンデルスゾーンのあふれる才能を物語る逸話でしょう。
中でも有名な「結婚行進曲」は、ワーグナーの「結婚行進曲(歌劇『ローエングリン』より)」とともに、世界中の新郎新婦を祝福し続ける名曲です。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。