〔特集〕今秋、感動の体験旅へ 京都・奈良 日本が世界に誇る2大古都、京都と奈良。世界文化遺産にも登録されている、この2つの都市の文化的価値と魅力を、料亭、庭園、建築などに焦点を当てて紐解いていきます。さらに美味処、話題のスポットの情報もお届けします。前回の記事はこちら>>
この秋は老舗料亭「瓢亭」で今、世界から注目される“料亭文化”を体感。美しき苔寺「西芳寺」では、荒廃と復活の歴史と、禅の庭の見方を学びます(9/20公開予定)。専門知識を持つかたの案内のもと、奥深い日本文化に出合う旅へ。さらに京都の旬を味わう新しい美味処をご紹介します。
阪田 徹さん(さかた・とおる)
仙道敦子(せんどう・のぶこ)さん
約400年前、南禅寺境内の茶店として始まった「瓢亭」。天保8年に料亭ののれんを掲げてから今日まで180年余、この地で歴史を刻んできました。
瓢亭に代表される「料亭文化」は世界に類を見ない稀有な文化だと話すのが、観光庁の国際観光アドバイザーを務める阪田 徹さんです。古都・京都の老舗料亭で、仙道敦子さんを「教養観光(グランドツアー)」へ案内します。
「『教養観光』とは、18世紀に英国人貴族の子弟の間で行われた修学旅行のこと。一流の知識人のガイドのもと、将来に向けた“貴族としての素養を習得するための学び”が実践されたのです。グローバル化が進む現代、自国についての教養を身につけ、それを他文化と比較しながら自分の言葉で伝えられなければいけません」と阪田さん。
京料理の最高峰・瓢亭を代表する料理の一つに、明石鯛のお造りがあります。先代の髙橋英一さんが若い頃、明石の担ぎ屋との出会いがあり、そこから一年を通して瓢亭の向付は鯛のみ。
「明石鯛は最高級の魚として江戸時代から愛されてきました。そのおいしさには明確な根拠があります」と阪田さんは話します。明石海峡は潮の流れが速く、窒素やリンを含む栄養分が舞い上がることでプランクトンが大量に発生します。豊富な餌を食べ、荒波で鍛えられた鯛は、身が引き締まって脂のりがよく、その歯ごたえとうまみを生かすために瓢亭の鯛はへぎ造りなのです。
3人のお子さんのお弁当を25年間作ってきた料理好きの仙道さんの目を引いたのは、明石鯛に添えられたトマト醬油。海外のかたにもなじみ深いトマトを使って生魚を食べやすくしようと、15代目当代の義弘さんが考案した新定番です。
一方で創業当時からある「瓢亭玉子」は、茶店の時代に庭先で飼っていた鶏の卵を茹でて出したのが始まりといわれ、古格を守る瓢亭の象徴といえます。「歴史と格式の制約がある中で、時代に合わせてブラッシュアップを加える。瓢亭はクラシックとイノベーションを両立してきた存在なのです」(阪田さん)。
瓢亭 本店(ひょうてい ほんてん)
京都市左京区南禅寺草川町35
TEL:075(771)4116
(営)12時〜13時、17時〜19時(ともに入店)
水曜定休、ほか不定休あり
※次回に続く
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この記事の掲載号
※料理店の献立は仕入れの都合により、食材や料理内容が変更になる可能性があります。また料金は別途サービス料等がかかる場合があります。※施設・店舗は臨時休業の場合があります。事前にご確認のうえお出かけください。撮影/本誌・坂本正行 きもの・小物コーディネート/相澤慶子 きもの提供/服部商店ときね 帯/服部織物室町店 ヘア&メイク/徳田郁子 着付け/小田桐はるみ 『家庭画報』2023年10月号掲載。この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。