クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第7回 ヴィラ=ロボス『ブラジル風バッハ』
イラスト/なめきみほ
バッハとブラジル、そしてチェロを愛したヴィラ=ロヴォス
今日9月7日は、ブラジルの独立記念日です。ブラジルと聞いて、ぱっと頭に浮かぶのが、リオ・デ・ジャネイロ生まれの作曲家ヴィラ=ロヴォス(1887~1959)の『ブラジル風バッハ』です。
20世紀を代表する作曲家の1人に数えられるヴィラ=ロヴォスは、その生涯に1000曲以上の作品を残しています。代表作『ブラジル風バッハ』は、敬愛するJ・S・バッハへのオマージュとして作曲された9曲の連作で、バッハの作風と自らのルーツであるブラジルの伝統音楽を融合させた意欲的な作品です。
1930年に書かれた第1番は、チェロをこよなく愛したヴィラ=ロヴォスが、チェロのみの合奏用に仕上げた作品で、ブラジルの民族的な旋律とチェロの深い響きが絶妙に絡み合う名作です。そして、9曲の中でも最も有名な「第5番」は、ソプラノ独唱とチェロの合奏のために書かれた名旋律で、1939年3月25日に、リオ・デ・ジャネイロで初演されています。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。