クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第8回 アントニン・ドヴォルザーク 交響曲第9番『新世界より』
イラスト/なめきみほ
クラシック史上屈指の“鉄道オタク”ドヴォルザークの代名詞
今日9月8日は、チェコ国民楽派の作曲家アントニン・ドヴォルザークの誕生日です。
ボヘミア(現在のチェコ共和国西部)の肉屋の家に生まれたアントニン・ドヴォルザーク(1841~1904)は、家に出入りする旅音楽家の演奏を聴いて音楽家を志し、晩年にはオーストリア貴族院から終身議員の栄誉を受けるという、立志伝を絵に書いたような作曲家です。
その彼が、51歳にして「ニューヨーク・ナショナル音楽院」院長就任要請を受けて新大陸アメリカに渡り、1892年から約3年間のアメリカ滞在中に生み出した名曲が、交響曲第9番『新世界より』です。
日本では『家路』の名で親しまれている哀愁に満ちた第2楽章が人気ですが、クラシック史上屈指の“鉄道オタク”として有名なドヴォルザークが新大陸を走る機関車の発車シーンを描いたといわれる第4楽章冒頭の重厚なメロディにもご注目を。アメリカ滞在中、暇があればグランド・セントラル・ターミナルで汽車を眺めていたというドヴォルザークの想いが心に染みる名曲です。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。