クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第10回 ベンジャミン・ブリテン『青少年のための管弦楽入門』
イラスト/なめきみほ
音楽教育の定番作品を彩るヘンリー・パーセルの主題
今日9月10日は、バロック時代のイギリスの作曲家ヘンリー・パーセル(1659~1695)の誕生日です。
バロックオペラの最高峰と讃えられる『ディドとエネアス』や、鍵盤作品及び宗教曲、そして重用されていた英王室のための祝賀音楽などを手がけたパーセルは、わずか36歳でこの世を去っています。
このパーセルの名を世に広めたのが、20世紀イギリスを代表する作曲家ベンジャミン・ブリテン(1913~1976)でした。彼が手がけた、『青少年のための管弦楽入門〜ヘンリー・パーセルの主題による変奏曲とフーガ〜』は、1945年にイギリス政府の意向を受けた英国放送協会(BBC)が一般の人々への音楽入門を目的として制作した映画『管弦楽の楽器』のための音楽です。
ナレーターが楽器の紹介をしながら進行する構成は、子どもの音楽教育にぴったり。日本語では、栗原小巻、小澤征爾、三枝成彰らのナレーション・アルバムが存在します。これはまさに、プロコフィエフの『ピーターと狼』、プーランクの『ぞうのババール』と並ぶ子どものための“3大教育プログラム”といえそうです。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。