クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第11回 アルヴォ・ペルト『ベンジャミン・ブリテンへの追悼歌』
イラスト/なめきみほ
音楽の新たな可能性を感じさせるペルトの世界
今日9月11日は、エストニアの作曲家アルヴォ・ペルト(1935~)の誕生日です。今年88歳のペルトは、「現代音楽」を代表する作曲家として高く評価され、今も現役で活躍中です。
「現代音楽」と聞くと何となく難しそうに聞こえますが、彼の名を世に知らしめたアルバム『タブラ・ラサ〜アルヴォ・ペルトの世界〜』を聴けばそんな杞憂は吹っ飛びます。中でも衝撃的な作品が、1977年に作曲された『ベンジャミン・ブリテンへの追悼歌』でしょう。
鐘の音を背景に弦楽合奏が嘆きの歌を歌いつつ、徐々に厚みと音量を増しながら降下してゆく音楽の美しさはまさに衝撃的。
昨日この連載で紹介したイギリスの作曲家ブリテンへの深い尊敬の念が込められた作品からは、音楽の新たな可能性が垣間見えるようです。
ペルトはこの曲について「これは一つの個人的な挽歌にして、極めつきの終結和音であり、神秘的な限界体験だ」と語っています。同時代の音楽の素晴らしさをぜひご体験あれ。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。