クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第14回 クロード・ドビュッシー『月の光』
イラスト/なめきみほ
月に魅せられた作曲家・ドビュッシー
今日9月14日は、旧ソビエト連邦の月探査機「ルナ2号」が、人工物として初めて月に衝突した日です。(1959年)
いにしえより、月は人々の憧れの対象なのでしょう。クラシックにおいてもそれは同様。作曲家たちが残した作品の中からも、その思いが伝わってくるようです。その代表的な作品が、印象主義の作曲家ドビュッシー(1862~1918)の『月の光』です。
1905年に出版された全4曲からなるピアノ曲集「ベルガマスク組曲」の第3曲にあたる『月の光』は、ドビュッシーのすべてのピアノ曲の中でも、最も有名な作品の1つです。
「ベルガマスク」の名は、イタリア滞在中に受けたベルガモ地方の印象によるもので、当時ドビュッシーが好んでいたヴェルレーヌの詩に触発された作品だといわれています。中でも『月の光』の美しさは格別。音楽による情景描写の最高峰とたたえられています。
ヴェルレーヌの同名の詩をもとに2つの歌曲『月の光』も手がけたドビュッシーは、まさに月に魅せられた作曲家といえそうです。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。