クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第16回 ガブリエル・フォーレ『レクイエム』
イラスト/なめきみほ
20世紀の音楽界を変えた名教師の遺産
今日9月16日は、フランスの音楽家(作曲家・指揮者・音楽教師)ナディア・ブーランジェ(1887~1979)の誕生日です。
教師としての業績はまさに圧巻。フィリップ・グラス、バーンスタイン、ピアソラ、リパッティにバレンボイムらのほか、アメリカンポップスのレジェンド、クインシー・ジョーンズや、フランス音楽界の超大物ミシェル・ルグラン、そしてジャズピアニストのキース・ジャレットらが彼女のもとから巣立っています。
さらには指揮活動にも注目です。作曲の師であったガブリエル・フォーレの『レクイエム』を指揮したアルバムは、村上春樹の『古くて素敵なクラシック・レコードたち』(文藝春秋刊)にも紹介されている名盤です。
生涯にわたって音楽に真摯に奉仕してきたブーランジェは、亡くなる直前に「教え子たちを愛しています。教えることは狂おしいほどの喜びです」という言葉を残しています。この思いこそが20世紀のクラシック界を変える原動力だったに違いありません。
※『古くて素敵なクラシック・レコードたち』で紹介されているのは1948年の音源
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。