クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第18回 チャイコフスキー『弦楽セレナーデ ハ長調』
イラスト/なめきみほ
日本クラシック界の黎明期を支えた名旋律
今日9月18日は、「サイトウ・キネン・オーケストラ」にその名を遺す音楽家(チェロ奏者・指揮者・音楽教師)齋藤秀雄(1902~74)の命日です。
クラシックの黎明期にあった日本において、さまざまな業績を残した齋藤秀雄の最大の功績は、1948年に吉田秀和らとともに「子供のための音楽教室」を開設したことでしょう。これが後の「桐朋学園」へとつながり、指揮者の小澤征爾をはじめとする素晴らしい人材を世の中に輩出していったのです。
彼の没後、齋藤を慕う教え子たちが主体となって「サイトウ・キネン・オーケストラ」(1984年〜)や、「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」(1992年〜。2015年にセイジ・オザワ松本フェスティバルに改称)が創設されたことは、齋藤の存在とその功績を際立たせます。
その齋藤秀雄が指揮法の授業の題材としていた作品がチャイコフスキーの『弦楽セレナーデ ハ長調』でした。印象的なメロディは、「おー人事」のCMでもおなじみです。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。