〔特集〕時空を超えた眼福の“旅”へ 物語のあるジュエリー 第4回 単なる装飾品の域を超え、感動と驚きを与えてくれるジュエリー。メゾン伝統のスタイル、サヴォアフェールに革新的なテクノロジーを駆使し、今年もさまざまな新作が生まれました。歴史を遡り、遥か彼方の風景や夢想の世界にまで私たちを連れていってくれる、逸品の数々をご堪能ください。
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自然主義の深化が描く新たな風景
庭園への誘(いざな)い
1780年の創業以来、常に自然を讃えつつ新たな美を創造してきた「ショーメ」。最新ハイジュエリーのテーマは、「ル ジャルダン ドゥ ショーメ(ショーメの庭)」。深い森に始まり、光に照らされた畑、花園へ至るコレクションが、繊細にして豊穣な自然を巡る、至高の散策へと私たちを誘ってくれます。
王侯貴族も虜にした高貴なる自然賛歌
皇帝ナポレオンが深く愛した皇后ジョゼフィーヌ。パリ郊外のマルメゾン城のバラのコレクションをはじめ、自然や植物学に情熱を注いだ彼女がショーメの初代のミューズだったことは、メゾンにとってとても象徴的なことです。以来、自然主義のジュエラーとしての伝統は変わることなく、あらゆる時代の文化や芸術と深く結びついた名品の数々を世に送り出してきました。
“密やかに想いを伝える”という意味が込められたパンジーのティアラ(1850年制作)/パリ ショーメ・コレクション
朝露を湛えた伸びやかなバラのつぼみのブローチ(1976年制作)/パリ ショーメ・コレクション
そしてメゾンの美の系譜に新しい歴史を刻む「ショーメの庭」。森と下草の繊細さと力強さに目を向け、豊かに実る畑で植物の生命の瞬間を捉え、庭園に咲く花々の色彩とフォルムの無限さを賛美し、世界の花々に想いを馳せる……。植物の高貴さを尊ぶ姿勢に胸打たれるコレクションです。
ポプラの森に差し込む光 木々の一瞬の美を永遠にショーメの卓越した金細工の技が存分に生かされたカフ。何層にも重なり合い、一つとして同じではないポプラの葉はまるで黄金の彫刻さながらです。一方対照的に、煌めくダイヤモンドの直線の連続で光をはらんだ木々を表現。プリンセスカットのイエローダイヤモンドが、この光景を神々しいまでの世界に昇華させています。「ププリエ」カフ(YG×WG×ダイヤモンド)1億197万円(参考価格)/ショーメ
蔓の先、葉脈にまでみなぎる豊穣のブドウの光輝1825年に登場して以来、メゾンを代表するモチーフの一つとなっているブドウの木。今作では、植物学者の観察眼にも通じる精巧さが見事です。パヴェダイヤモンドを緩急自在に敷き詰めた葉の躍動感、しなやかな蔓の表情に生命を感じさせるほど。また、果実を表現していないのに、収穫間近の実りを連想させるモザンビーク産のルビーの存在感。250年の伝統に裏打ちされたデザインの斬新性が光ります。「フェイ ドゥ ヴィーニュ」ネックレス(WG×ルビー×ブラックスピネル×ダイヤモンド)3億3880万円(参考価格)/ショーメ
東洋の神秘への憧れを菊の花びらの陰影に託して“世界の花束”をテーマにした作品。11世紀のペルシャの学者にして詩人、ウマル・ハイヤームが楽園の花とよんだ菊は、ショーメにおいても限りないイマジネーションをかき立てる花です。その立体的な花びらの内側にローズカルセドニーを配して奥行き感を表現。花芯には12.17ctのセイロン産ブルーサファイアが凜として威風を放ちます。「クリザンテーム」リング(WG×サファイア×カルセドニー×ダイヤモンド)8228万円(参考価格)/ショーメ
まるで優美な天空の舞 夢のような煌めき自在な地金の技、ピンクスピネルの巧みなグラデーションによって、古代エジプトの権力と王位の象徴でもあったアイリスを見事に表現。ネックレスのトップに輝くのは、タンザニアで発見された24.26ctのスピネル。それをメゾンに伝わる「フィルクトー」という技術でわずかに傾けてセットしたことで、まるで宝石が浮かび上がっているかのような仕上がりに。「イリス」ネックレス(WG×スピネル×ダイヤモンド)2億5190万円 同リング(WG×スピネル×ダイヤモンド)7887万円(ともに参考価格)/ともにショーメ
※次回に続く
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