クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第19回 グスタフ・マーラー『交響曲第7番ホ短調(夜の歌)』
イラスト/なめきみほ
“夏休み作曲家”マーラーの時代がついに来た
今日9月19日は、グスタフ・マーラー(1860~1911)の『交響曲第7番ホ短調(夜の歌)』の初演日です。今でこそ、後期ロマン派を代表する“交響曲作曲家”として人気の高いマーラーですが、存命中は“世界最高峰の指揮者”としての名声が高く、作曲は指揮が休みの夏の時期に行う、いわゆる“夏休み作曲家”だったのです。
『交響曲第7番』が作曲された1905年当時のマーラーは、ウィーン宮廷歌劇場(現ウィーン国立歌劇場)の芸術監督に君臨。翌年にかけて、モーツァルト生誕150周年記念のオペラ・チクルスを指揮するという大仕事を担っていた時期でした。そのような生活の中で『大地の歌』を含む10曲の巨大な交響曲を完成させたマーラーの意欲には圧倒されるばかりです。
「やがて私の時代が来る」という彼の言葉が実現したのは1960年以降。日本においても1970年代から80年代にかけてコンサートで頻繁に演奏されるようになったことが思い出されます。『交響曲第7番』の初演は1907年9月19日。プラハにおいて、マーラー指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で行われています。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。