クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第20回 パブロ・デ・サラサーテ『ツィゴイネルワイゼン』
イラスト/なめきみほ
超絶技巧がちりばめられた“ロマの歌”
今日9月20日は、スペインの作曲家でヴァイオリニスト、パブロ・デ・サラサーテ(1844~1908)の命日です。
少年時代から圧倒的な才能を発揮していたサラサーテは、10歳にしてスペイン女王の御前演奏を行い、その後も“ヴァイオリンの鬼神”パガニーニと並び称されるほどの演奏テクニックを武器にヨーロッパ中を席巻します。
彼の演奏の凄さに感銘を受けたのは一般大衆だけではありません。同時代の作曲家サン=サーンスの『序奏とロンド・カプリチオーソ』やラロの『スペイン交響曲』、ブルッフの『スコットランド幻想曲』などが、サラサーテに献呈されていることからも、彼の演奏の素晴らしさと影響力の大きさが想像できます。
そのサラサーテが、自ら演奏するために生み出した作品の数々は超絶技巧のオンパレード。中でも“ロマの歌”を意味する『ツィゴイネルワイゼン』は、世界中のヴァイオリニストたちがスーパーテクニックを競い合う難曲として名高い名曲です。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。