エンターテインメント

“流星のやりたいようにやっていいよ”役柄とも重なる横浜流星さんと佐藤浩市さんの関係

2023.09.21

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注目の人:佐藤浩市さん×横浜流星さん

俳優の横浜流星さんが2023年6月12日にボクサーのプロテストに合格したというニュースに、驚いた人も多かったことだろう。このきっかけになったのが、横浜さんがボクサーの黒木翔吾、佐藤浩市さんがその指導者の広岡仁一を演じ、ダブル主演を務めた映画『春に散る』である。

二人の絆が紡いだリアルで、熱い物語

“一瞬”だけを生きると決めた二人の情熱的な物語はもちろんのこと、プロボクサーから手ほどきを受けたという本格的な試合シーンもあって、見応えは抜群。疑似親子のように描かれている翔吾と仁一は、横浜さんと佐藤さんの関係にも重なるものを感じる。

「僕が撮影中の出来事で印象に残っているのは浩市さんが“流星のやりたいようにやっていいよ”っていってくださって、ずっと受け止めてくださったことです。だから自分は本当に飛び込むだけでした。クランクイン前にも浩市さんにミットを持っていただく機会があって、本番のように合わせることができたのもすごく大きかったなと思います。話さなくても心で通じ合えるものがあるので、何度も手合わせできたのはすごくよかったです」と横浜さん。


手合わせをやることにした理由を佐藤さんに尋ねると、「実際に必要なわけだから当然のことなんですけど、40年前の俺が流星と同じポジションにいて、どれだけ撮るのが大変なのかがわかるからです。“リングの上から撮ります”っていわれて、流星たちが汗と血しぶき、火花をまき散らすくらい真剣に演ってくれなければ、何も映らないんです。そのまま“続きましてセコンドから撮ります”っていわれたときに、彼らがそういう試合をしてくれるのを目にすることができたら、セコンドも“いけー!”っていえるわけで、その関係性が築かれているかということに尽きるんです」と語った。


さらに横浜さんは「ボクシングの試合シーンはすごくハードで体も使うので、身も心もすごく削られて疲弊することもあったんですが、どんなときも浩市さんが寄り添って味方でいてくださったことに、何度も救われました。翔吾が仁一に抱いていたいろんな気持ちを演じていて感じましたが、自分も浩市さんには同じ気持ちを抱いていました」

役の延長線上にもある二人の絆が作品に深い真実味を与えている。

(佐藤浩市さん)ジャケット54万8900円/ゼニア(ゼニア カスタマーサービス)(横浜流星さん)ジャケット7万2600円 シャツ1万1000円 パンツ3万7400円 ブーツ6万8200円/すべてラッド ミュージシャン(ラッド ミュージシャン 原宿)

(佐藤浩市さん)ジャケット54万8900円/ゼニア(ゼニア カスタマーサービス)(横浜流星さん)ジャケット7万2600円 シャツ1万1000円 パンツ3万7400円 ブーツ6万8200円/すべてラッド ミュージシャン(ラッド ミュージシャン 原宿)

一試合は一つの作品。格闘家と役者に通じるもの

本作で描く“師弟関係”に現代性が反映されていることにも佐藤さんは触れた。

「数十年前の映画であれば、お互いの立ち位置が違います。ストイックなスポーツだと上から目線で多くを語らずに“俺の背中だけ見てろ”というのが定番だったのをもう少しフラットにしてみようというところから考えました。そういうニュアンスを共有しながら演じてみて、この映画にある種の新鮮さを感じたり、今までの仕事とは違う何かに惹かれたりしたのではないかなと思います。現実的に僕ら同士の関係性においても同じことがいえるのではないでしょうか。僕が流星のほうへ降りていくというよりは、最初から同じ立ち位置だということ。それが伝わるといいなと思います」

「この映画を通して夢、勇気や元気を受け取ってもらいたいですね」─ 佐藤浩市

そのストイックなスポーツの魅力については、横浜さんが説明してくれた。

「格闘技には“儚さ”もあります。ボクシングであれば3分、12ラウンド、勝ち負けははっきりしていて、数分で終わってしまう。その試合のために汗水垂らしながら命をかけて取り組んでいます。格闘家たちは試合のことを“一つの作品”ともいうんです。観ている人たちの心を動かすところは役者にも通じる部分があるのかなと思います。女性からすると、ただ殴り合っているだけで怖さを感じるかもしれませんが、それだけじゃない。入場するときの表情や姿には、その人の生き様が見えるんです。覚悟を背負っていたり、微笑みを浮かべていたり。だからリングでは噓は利かないですし、相手がいないと成立しないので感謝を忘れてはいけない。ボクシングは硬派で武道に近いのかなと思います」

「チャレンジを恐れず、悔いのない人生を歩むことの素晴らしさを感じてくれたら嬉しいです」─ 横浜流星

与えられた時間をどう生きるのか。翔吾と仁一はボクシングの試合に貴重な一瞬を捧げたが、お二人なら何をする?

「僕は険しい道を選ぶことです。自分は格闘技が好きで、この世界に入っていなかったらきっと格闘技を目指していたと思います。格闘技へのリスペクトがあるので、演じるということは“噓”だけど、リアルさを追求したくてプロテストも受けたんです」と横浜さん。

「この映画を通して現実には辛いことがあっても、生きていればいいこともあることを感じてほしいですね」と語った佐藤さんは、役を演じることが“すべて”なのだろう。


佐藤浩市(さとう・こういち)
1960年、東京都生まれ。1980年に俳優デビューをし、翌年、映画『青春の門』でブルーリボン賞新人賞を受賞。その後も日本アカデミー賞最優秀主演男優賞、同最優秀助演男優賞、ブルーリボン賞主演男優賞など受賞多数。日本を代表する俳優として活躍。待機作に映画『愛にイナズマ』(2023年10月27日公開予定)がある。

横浜流星(よこはま・りゅうせい)
1996年、神奈川県生まれ。2011年に俳優デビュー。近年の出演作にはドラマ『DCU』、『新聞記者』、映画『嘘喰い』、『流浪の月』、『アキラとあきら』、『線は、僕を書く』(すべて2022年)、『ヴィレッジ』(2023年)など多数。2023年2月から全国で上演された『巌流島』は全40公演が完売し、満席で幕を閉じた。2024年春に短編映画『MIMI』『MIRRORLIAR FILMS Season5』が公開予定。2025年大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)〜』で主演を務める。

『春に散る』

ⓒ 2023映画『春に散る』製作委員会

ⓒ 2023映画『春に散る』製作委員会

沢木耕太郎の小説を原作に瀬々敬久監督が映画化した作品。

かつてボクサーだった主人公の広岡仁一は引退後、渡米して事業を興し成功を収めたが、空虚な思いを抱いていた。40年ぶりに帰国した広岡は一度はボクシングをやめた黒木翔吾と出会うが、再起を望む翔吾は広岡に指導を懇願する。

いつしか翔吾をチャンピオンにしようとやがて広岡も情熱を甦らせていく。それぞれが命をかけて挑む人生の行方は......。

出演は佐藤浩市、横浜流星、橋本環奈、坂東龍汰、片岡鶴太郎、哀川 翔、窪田正孝、山口智子ほか。全国公開中。公式サイトはこちら>>

この記事の掲載号

『家庭画報』2023年10月号

家庭画報 2023年10月号

撮影/永田忠彦 構成・文/山下シオン (佐藤浩市さん)ヘア&メイク/及川久美 スタイリング/喜多尾祥之 (横浜流星さん)ヘア&メイク/永瀬多壱〈Vanites〉 スタイリング/伊藤省吾〈sitor〉

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