物語を通して希望を見出す
ミュージカル『アナスタシア』木下晴香さんインタビュー2020年の初演の前にブロードウェイの舞台版『アナスタシア』を映像で拝見したのですが、まず1幕の最後の場面でアーニャが歌う「Journey to the past」という曲が印象的でかっこいいという印象でした。
アーニャが夢にまで見たパリが目の前にあることへの心の高ぶりや緊張など、交錯する思いがありながらも壮大に歌い上げていて、この役を演らせていただくと思うと、私自身も心が震えたのを覚えています。
その初演では、アーニャの気が強くて癇癪持ちである面を演じるのに、とても苦労しました。ヴラド役の石川 禅さんに「私は怒るのが苦手なんです」と相談したこともありました。
今回改めてアーニャと向き合って、初演時の自分がいかに表面的なとらえ方をしていたかに気づかされました。記憶を失い、恐怖を抱きながらも一人で生き抜いてきた彼女は強くならざるを得なかったのだと思います。誇りや気高さなど、彼女が持っている強さは魅力でもあるので、大事にしたいポイントです。
本国のクリエイティブスタッフとの作品づくりでは、立ち稽古に入る前にシーンごとに共通認識を持って挑めるようにと“キャラクタートーク”という時間を設けてくださいました。
台本を深く読み込むことができるのがありがたいですし、楽しいです。その際に「アナスタシア」という名前には“甦る”という意味があり、サンクトペテルブルクで生きる人々にとってアーニャはその存在自体が希望だとも伺いました。彼女が地位を取り戻して甦っていくことも一つの大きなテーマです。
また一幕のラストにあるパリに向けて足を踏み出すアーニャが不安を吐露するシーンでは、彼女の抱いている心情をありのままに演じれば、観る側も人の弱さに共感できると指摘されました。アナスタシアが困難を乗り越えようとする姿に勇気や希望を感じ取っていただけたら嬉しいです。
木下晴香1999年佐賀県生まれ。2017年にミュージカル『ロミオ&ジュリエット』のジュリエット役にてデビュー。主な出演作にミュージカル『モーツァルト!』『王家の紋章』『ファントム』『ザ・ビューティフル・ゲーム』など多数。2019年にはディズニー実写映画『アラジン』のプレミアム吹き替え版でヒロインのジャスミン役に抜擢され、話題となった。
ミュージカル『アナスタシア』
アニメ映画『アナスタシア』に着想を得て2017年のブロードウェイで初演され、劇評などで高評価を得た。スペインやドイツ、北米ツアーなど世界各国で上演。本国のクリエイティブスタッフとともに、2020年の日本初演以来、待望の再演が実現する。出演は葵わかな・木下晴香/海宝直人・相葉裕樹・内海啓貴/麻実れいほか。
東急シアターオーブ~2023年10月7日
S席1万4000円(全席指定)ほか
Bunkamuraチケットセンター 電話03(3477)9999
URL:
https://www.anastasia-musical-japan.jp/※大阪公演あり