クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
連載一覧はこちら>>
第22回 リヒャルト・ワーグナー 楽劇『ニーベルングの指環』
イラスト/なめきみほ
スター・ウォーズにも影響を与えた史上空前の超大作
今日9月22日は、リヒャルト・ワーグナー(1813~83)の楽劇『ラインの黄金』の初演日です。
この『ラインの黄金』と、『ワルキューレ』『ジークフリート』『神々の黄昏』からなる楽劇『ニーベルングの指環』4部作は、合計15時間以上の演奏時間を要するクラシック史上空前の超大作です。その内容は、全世界を支配可能な“黄金の指環”をめぐる、神や英雄たちによる壮大な戦いの物語。
ワーグナーは、この作品すべての台本を書き、その台本に音楽をつけ、さらには、ドイツのバイロイトに専用の劇場を建設してしまったのです。しかも上演に際して、演出まで担当したというのだからびっくりです。そして、聴衆が作品を理解しやすいように100種類にも及ぶ「ライトモティーフ」(登場人物それぞれのテーマや、情景と結びついた動機)を創り出します。
この手法は映画『スター・ウォーズ』のサウンドトラックにも大きな影響を与えているだけに、ワーグナーが現代に存在したら、きっと映画音楽の大家になっていたのでしょうね。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。