クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第25回 J・S・バッハ『ゴルトベルク変奏曲』
イラスト/なめきみほ
空前のカリスマピアニスト、グレン・グールドの代名詞
今日9月25日は、カナダのピアニスト、グレン・グールド(1932~82)の誕生日です。
“20世紀でもっとも個性的な天才ピアニスト”とうたわれるグールドは、1955年の米国デビュー公演直後に米国CBS(現ソニー・クラシカル)と専属録音契約を結びます。翌年発売されたデビュー盤、J・S・バッハの『ゴルトベルク変奏曲』は、それまでのバッハ演奏を一新し、クラシック史上屈指の名盤となったのです。
グールドはその後、欧米やソ連での演奏活動によって世界的な名声を確立しますが、1964年4月のリサイタルを最後に演奏会活動から引退。以後は録音と放送番組の仕事と執筆に専念し、1982年10月4日に、脳卒中のため50歳の若さで急逝します。
死の前年に録音された『ゴルトベルク変奏曲』は遺作となり、グールドと2つの『ゴルトベルク変奏曲』は永遠不滅の伝説となったのです。遺された録音を通じて今も新たなファンを生み出し続けるグールドは、クラシック音楽史上屈指のカリスマとして語り継がれる存在です。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。