〔特集〕時空を超えた眼福の“旅”へ 物語のあるジュエリー 最終回 単なる装飾品の域を超え、感動と驚きを与えてくれるジュエリー。メゾン伝統のスタイル、サヴォアフェールに革新的なテクノロジーを駆使し、今年もさまざまな新作が生まれました。歴史を遡り、遥か彼方の風景や夢想の世界にまで私たちを連れていってくれる、逸品の数々をご堪能ください。
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大胆さと繊細さが生み出す、ここにしかない美しさ
ギメルの大胆なセッティング
解説／ 山口 遼（宝石史研究家）ジュエリーは、宝石を貴金属で留めて作るのですが、これを「石のセット」と呼びます。接着剤を用いるわけではなく、貴金属を曲げて宝石を押さえ込みます。普通使われるのは、「爪留め」と呼ばれる複数の金属線の先端を曲げる方法と、「枠留め」と呼ばれる石の全周を金属で額縁状に押さえ込む方法で、95パーセント以上の作品がこの2種のセッティングで作られています。
ここに挑戦したのが「ギメル」の穐原（あきはら）かおるさん。石の留め方をデザインにしてしまいました。その大胆さ、複雑さ、どれを取っても難しく、まさにクラフトマン泣かせ。しかし挑戦されれば受けて立つのが名工。今回は狂気に近い技で作られた驚くべき作品をご紹介します。
【1】のネックレスはローズカットのマーキス形のダイヤモンドを使い、表面からは爪も枠も見えない。なんとマーキスの外形に合わせて薄い台座を作り、それをダイヤモンドの両端に開けた穴に通した金属のピンで留めるという作品。気の遠くなる作業です。
【2】の房が下がったようなペンダントは、7個の独立した円環を作り、ブリオレットカットのダイヤモンドの先端に穴を開けて円環に水平に差し込み、裏面で留めています。その円環を金属線で上から順に吊るした手の込んだ作品です。
【3】のイヤリングは、なんと三角形のダイヤモンドの先端に穴を開けて、金属線の上に一直線に固定したもので、これはどこも動かない。これまでに見たこともない、ギメルならではのジュエリーです。
【4】は非常に可憐なつくりのネックレス。中央に穴を開けた円形の薄いダイヤモンドに金属線を通して固定したものと、直接チェーンを通したものを交互に配しています。
【5】はパパラチアサファイアをダイヤモンドで取り巻いたペンダントでシンプルなデザインに見えますが、取り巻きのダイヤモンドがすばらしい。これは丸いビーズ状のダイヤモンドの中央に穴を開け、そこに見えないように白い金属線を通して先端だけ、金で爪を作って留めたもの。
こうして見ますと、よくまあ、これだけ珍しいカットのダイヤモンドを作る職人がいるものだと感心しますが、世界中から、ギメルならうまく生かして作品にしてくれるだろうと持って来る。そこがまた凄いし、それを驚くべきジュエリーに仕上げる穐原さんとギメルの職人たちも見事。日本が誇る現代ジュエリーの粋でしょう。
そしてもちろん、こうしたダイヤモンドの傑作だけでなく、ギメルならではの色石を用いたパヴェセッティングや立体的な色石の使い方が特徴的なつくりもますます冴えています。日本の秋を表現した作品はパヴェのほとんど爪の見えない留め方も凄いですが、宝石の微妙な色合いを少しずつグラジュエートさせたこだわり方など日本人ならではの世界に冠たる見事さ。穐原さんならではの傑作です。
ジュエリーで描く美しい日本の秋
自然界の繊細な色を水彩画のように宝石で描いた作品たちギメルのジュエリーは、私たちの子どもの頃の記憶を呼び覚まします。それはギメルにかかわるすべての人々が、四季を愛し、日々を丁寧に生き、さまざまな変化に揺れる世界の人々に優しい想いを寄せているから。まさに希望が込められたジュエリーです。
秋の空に舞う赤とんぼのブローチ（YG×Pt×ルビー×ダイヤモンド）
山粧うリーフのブローチ上（Pt×デマントイドガーネット×ダイヤモンド×サファイア）、右と左（ともにYG×Pt×マンダリンガーネット×イエローダイヤモンド×ダイヤモンド×イエローサファイア）
みずみずしい葡萄のピンズ（すべてPt×YG×サファイア×デマントイドガーネット×ダイヤモンド）すべて参考商品／すべてギメル
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