クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第27回 エドゥアール・ラロ『スペイン交響曲』
イラスト/なめきみほ
名門コンクールにその名を残す名手のこだわり
今日9月27日は、フランスのヴァイオリニスト、ジャック・ティボー(1880~1953)の誕生日です。
ボルドーの音楽教師の家に生まれたティボーは、名ヴァイオリニストの常で、8歳にしてリサイタルを開き、13歳からパリ音楽院に学ぶという神童ぶりを発揮。その後ソリストとして名声を高めたティボーは、1905年にアルフレッド・コルトー(ピアノ)、パブロ・カザルス(チェロ)とのピアノトリオ「カザルス三重奏団」を結成し、世界的名声を得るに至ります。
さらにティボーの名を世に広めたのが、マルグリット・ロン(ピアノ)と共同で開催した「ロン=ティボー国際コンクール」でしょう。これは今も若手音楽家の登竜門として知られるコンクールの名門です。そのティボーがこだわりを持って演奏し続けた作品が、ラロの『スペイン交響曲』でした。遺された同曲の録音の数々からは、さながら完璧を目指して歩み続けた音楽家ティボーの執念が垣間見えるようです。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。