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【声に出してみたい古典】源頼実が詠んだ、静謐な夜の孤独

2023.10.03

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10月・静謐な夜に


源頼実(1015~44年)は、このころ歌の世界で活動を共にした有力な歌人集団である、和歌六人党(ろくにんとう)の一人。三十歳で没した。『後拾遺和歌集』(1086年成立)は、四番目の勅撰和歌集で、白河(しらかわ)天皇が下命(かめい)し、藤原通俊(みちとし)が撰者(せんじゃ)となった。

選・文=渡部泰明(日本文学研究者)

夜、落ち葉が屋根に散りかかっている家では、聞いて判別することができない。時雨が降っているのか、降っていないのか――。

一人の隠棲(いんせい)者が、山里のわび住まいの中、寝られぬままに、更(ふ)け行く初冬の夜のしじまに包まれている。ふいに屋根から、ぱらぱらと音が聞こえてきた。そしていつのまにか止んだ。あれは時雨の雨音だったのか。それとも落ち葉の降りかかる音だったのか。そんなことが幾晩も繰り返される。


源頼実が、わが寿命と引き換えに秀歌を詠ませよと住吉明神(すみよしみょうじん)に祈願し、この歌を詠んだことで早世したという伝承が残っている。降ったかと思うと止む時雨の特徴と、閑居の中の静謐(せいひつ)な孤独感とが落ち葉の音と交錯しつつ、絶妙に通じ合っている。

「時雨する夜も時雨せぬ夜も」の繰り返しは和歌ではルール違反ともいえるが、かえって山里に棲(す)む人の、他者に向ける言葉を要しない日々のつぶやきを思わせ、深い。
国文学資料館館長の渡部泰明先生による朗読と解説を音声でお楽しみください!

こちらからご視聴いただけます>>



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この記事の掲載号

『家庭画報』2023年10月号

家庭画報 2023年10月号

イラスト/髙安恭ノ介

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