【H・モーザー】ハンドメイドの少量生産にこだわる名ブランド。毎日使えるアートピース
人生を彩る時計メゾン 「H・モーザー」 見た瞬間、ダイヤルの美しい色に目を奪われる「H・モーザー」の時計。本格時計でありながら、その芸術性の高さが注目されているブランドです。
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ドイツ国境に程近いスイスの街、シャフハウゼン。「H・モーザー」の創業者であるハインリッヒ・モーザーは、迫力満点のライン滝が有名なこの地で生まれ育ちました。時計職人としての才能を開花させると、ロシア・サンクトペテルブルクにわたり1828年に自身のブランドを創業。高品質なスイス製時計でロシア皇帝をも魅了し、巨万の富を築いた彼は、再びシャフハウゼンに戻ることを決意します。基幹産業がなく経済力に乏しい故郷の街を、どうにかしたいと考えたからです。
ライン川の豊かな水量に目をつけたモーザーは、私財を投じてスイス初の水力発電所を作ります。この電力を目当てにさまざまな企業が参画。あの有名なIWCも、その一つです。つまりハインリッヒ・モーザーがいなければ、シャフハウゼンの経済発展はなかったといっても過言ではありません。
その後ブランドは、クオーツウォッチ誕生による機械式時計の衰退によって休眠しますが、2005年に復活。職人がハンドメイドで一点一点作り上げる「フュメダイヤル」で人気を集め、美しいグラデーションとともに芸術的センスの高さが評判となりました。
そのダイヤルには、ブランド名のロゴさえ入れない潔さ。仏語で「煙」を意味する「フュメ」ダイヤルのミステリアスなルックスが、ブランドの代名詞になっているのです。部屋に飾って観賞するのではなく、毎日身につけて楽しめるアートピース。それがH・モーザーの腕時計なのです。
ダイヤルの6時位置には時計の精度を安定させるハイレベルな複雑機構であるフライング トゥールビヨンを搭載しています。「ストリームライナー・トゥールビヨン レインボー」(ステンレススティール×カラーサファイヤ、ステンレススティールブレスレット、ケース径40ミリ、自動巻き)1834万8000円/H.モーザー(エグゼス)
一見するとダイヤルには何も書いてありませんが、鮮やかなブルーフュメダイヤルの12時位置には、透明な文字でブランドロゴが入っています(上の時計も同様)。「パイオニア・センターセコンド アークティック ブルー」(ステンレススティール、ラバーストラップ、ケース径40ミリ、自動巻き)216万7000円
立体的な槌目(つちめ)仕上げのグラデーションダイヤルは、グラン・フー エナメル。釉薬を塗り高温の窯の中で焼き上げる作業を、何度も繰り返すことで、この味わい深い色を実現しています。「エンデバー・センターセコンド コンセプトライムグリーン」(ステンレススティール、クーズーレザーストラップ、ケース径40ミリ、自動巻き)420万2000円/ともにH.モーザー(エグゼス)
スイス・シャフハウゼンの時計産業の礎を築いたハインリッヒ・モーザー家
ライン川を見下ろす旧邸宅は街の観光名所 幅150メートルのライン滝は、街の観光名所。
モーザー家のかつての邸宅は、この滝にも程近い高台にあり、現在は一般開放しているミュージアムになっています。サイトから英語のガイドツアーも予約可能(
https://charlottenfels-museum.ch/)。華麗なる創業家一族の様子と、時計師としての偉業の数々も確認できます。
時計製造のすべてを行う真のマニュファクチュール 機械式時計で、最も細く繊細なパーツ、それがヒゲゼンマイ(ゴールドの輪の中にある渦状のパーツ)です。
時計の精度を司るヒゲゼンマイを作れる時計ブランドは、世界でも数社しかありませんが、H.モーザーはこの重要なパーツを自社製造する真の時計工房。外装だけでなく時計技術も業界トップクラスです。