クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第31回 ポール・デュカス『魔法使いの弟子』
イラスト/なめきみほ
完璧主義者が残した永遠のファンタジー
今日10月1日は、フランスの作曲家ポール・デュカス(1865~1935)の誕生日です。
デュカスの代表作といえば、ドイツの詩人ゲーテの作品をもとに作曲された交響詩『魔法使いの弟子』でしょう。この曲を一躍有名にしたのが、1940年のアメリカ映画『ファンタジア』です。史上初のステレオ音声作品の中で躍動するアニメーションと音楽とのコラボレーションは、今観ても新鮮そのもの。クラシック音楽がふんだんにちりばめられたこの映画は、永遠不滅のファンタジー作品です。
極度の完璧主義者であったデュカスは、納得のゆかない作品を死の直前に焼き捨ててしまったため、残された作品はわずか10数曲。そのうちの1曲がこの『魔法使いの弟子』であったことは、世界中の子どもたちにとっての僥倖といえそうです。
2000年にリメイクされた『ファンタジア2000』の中でも、唯一同じ映像が使われたこの音楽を聞いていると、とんがり帽子をかぶった魔法使いの弟子が、ほうきに魔法をかける姿が目に浮かびます。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。