クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第32回 フィリップ・グラス オペラ『サティアグラハ』
イラスト/なめきみほ
「非暴力・非服従」をテーマとしたミニマルミュージックの傑作
今日10月2日は、インド独立の象徴であるマハトマ・ガンディー(1869~1948)の誕生日です。
1982年の映画『ガンジー』をはじめ、数多くの著作物によってその業績が伝えられるガンディーですが、個人的にとても印象深いのが、フィリップ・グラス(1937~)のオペラ『サティアグラハ』(1979年初演)です。「サティアグラハ」とは、ガンディーが創った「真理の堅持・主張」を意味するサンスクリット語で、この言葉をスローガンに非暴力・非服従の運動が展開されました。
その音楽にはグラスならではの印象的なミニマリズムが取り入れられ、サンスクリット語の歌唱と繰り返される音楽で紡がれるステージからは、さながらオペラの新たな可能性が感じられるようです。
科学者アインシュタインを描いた『浜辺のアインシュタイン』(1976年初演)と、この『サティアグラハ』、そして、一神教を唱えた古代エジプト王アクナーテンを描いた『アクナーテン』(1983年初演)の3部作は、科学・政治・宗教の偉人を描いたミニマルミュージックの傑作です。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。