〔連載〕天野惠子先生のすこやか女性外来 日本の女性医療、性差医療の先駆者である天野惠子先生と、更年期とそれ以降の女性の健康について学びます。
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身体的・心理社会的ストレスの影響が大
抑うつ、不安症、睡眠障害──。メンタルの不調は女性に多い
活躍の場が広がる一方で、相変わらず女性に偏りがちな家事育児、介護の負担。特に家庭でも職場でも役割の多い中高年女性は、期待に応えようと頑張りすぎて、抑うつや強い不安などメンタルの不調を生じやすいものです。予防と対策のカギは十分な睡眠。ぐっすり眠れば大抵のストレスは乗り越えられるといいます。
天野惠子先生(あまの・けいこ) 静風荘病院特別顧問、日本性差医学・医療学会理事、NPO法人性差医療情報ネットワーク理事長。1942年生まれ。1967年東京大学医学部卒業。専門は循環器内科。東京大学講師、東京水産大学(現・東京海洋大学)教授を経て、2002年千葉県立東金病院副院長兼千葉県衛生研究所所長。2009年より静風荘病院にて女性外来を開始。
【睡眠障害】安眠は心身の健康の基本。自分の生活リズムを優先
家族の帰宅が深夜になるときは先に寝て、睡眠時間を確保。それを当たり前と考える意識改革が自身にも家族にも必要です。
十分な睡眠は自律神経を安定させ心身の不調を和らげる効果があります。少なくとも6時間の睡眠を確保しましょう。深部体温が約1度下がると体は入眠モードになります。就寝前のリラックスと上手な体温調整が重要です。
ありがちなのは家族の生活リズムに合わせることで生じる二次的な睡眠障害。40代~60代女性の睡眠時間は男性より約1時間少ないとのデータがあります。家族間で睡眠の大切さを共有し、帰るまで起きて待つ習慣の見直しを。
対策(1)寝る前にリラックスする●ホットミルク、ハーブティーなどをゆっくり飲む
●アルコールは睡眠を浅くするので就寝の2時間前まで
●カフェインを含む飲み物は18時以降控える
●好みの香りのアロマで気分を落ち着ける
●軽いヨガやストレッチで体をほぐす
対策(2)深部体温を下げる●入浴は就寝の1~2時間前に済ませ、体に熱をためない
●アイス枕で頭を冷やす
対策(3)自分のリズムを優先する●家族の深夜帰宅や早朝出勤に無理に合わせない
【介護うつ】まずは睡眠時間を確保。介護者として接する努力も
一人で抱え込まず、介護サービスを利用したり周囲の人の力を借りたりして、自分のために使える時間を確保しましょう。
責任感が強い人ほど「私が介護しなければ」と無理をしがちです。眠れない、食欲がないなどの症状が現れたら心のSOS。自分一人で抱え込まず、介護サービスや家族の力を借りて、まずは睡眠時間を確保する工夫をしましょう。
しっかりしていた頃の親と現在の姿を比べてしまうとどうしようもなくつらいもの。認知症のメカニズムや症状について勉強し、理解しがたい言動も「病状の一つ」と介護者の視点で客観的にとらえられると心が少し楽になります。
対策(1)介護サービスを利用する●デイサービス(通所介護)やショートステイ(短期入所生活介護)など介護サービスを活用し、できるだけ身体的・精神的・時間的負担を軽くする
対策(2)睡眠時間を確保する●最低6時間は睡眠時間の確保を。どうしても眠れない場合は睡眠導入剤を使うのも一つの方法
対策(3)好きなことを楽しむ●短時間でも趣味や好きなことを楽しみ、ストレスを上手に発散する
対策(4)「介護者」の視点を持つ●親への敬意を持ちつつ、第三者的な介護者の視点で接するよう気持ちを切り替える努力をする
*NPO法人性差医療情報ネットワーク「女性外来マップ」では、女性外来を開設している医療機関(2018年現在約300か所)のリストを公開。
URL:
http://www.nahw.or.jp/hospital-info*「女性外来オンライン」(天野惠子先生主宰)では、天野先生ご自身が厳選した女性の健康の回復や維持に役立つ信頼性の高い情報を発信しています。
公式サイト「女性外来オンライン」:
https://joseigairai.online/
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