遺伝性のがんと遺伝カウンセリング
がん遺伝子パネル検査で遺伝性腫瘍とわかることがある
がんの一部には、生まれ持った細胞(生殖細胞)にある、がんになりやすい性質を持つ遺伝子異常がそのがんの発生に関係している場合があります。例えば、BRCA遺伝子異常は乳がんや卵巣がん、すい臓がん、前立腺がんを発生させやすく、両親のどちらかにこの遺伝子異常があると、性別にかかわらず、子どもに50パーセントの割合で遺伝します。このような遺伝子異常があることがわかれば、がんになる前に早期からの検査や乳房・卵巣の切除などの対策が可能です。
がん遺伝子パネル検査では、このような遺伝性腫瘍に関連する遺伝子異常がわかることがあります。そのため、検査前に患者や家族が検査結果を知りたいかどうかを確認されます。
遺伝性腫瘍とされるがんに該当する場合、あるいは家族にがんになった人が多い場合には、がん遺伝子パネル検査の前に遺伝カウンセリングをすすめられることがあります。また、検査前に検査結果を知りたいと伝えた患者で、遺伝性腫瘍の可能性が高いという結果が出た場合にも遺伝カウンセリングが推奨されます。
がんゲノム医療連携病院など、がん遺伝子パネル検査を実施する病院では、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングを実施できる体制を整えています。
山本先生は「遺伝性腫瘍の可能性がある場合、知りたいか知りたくないかという患者さんの希望が最優先です。しかし、“知りたくない”という事前の意思表明があっても、“知らせるべき”遺伝子異常と考える場合は、医師間で協議を行い、さらに遺伝カウンセリングの専門家とも相談して、きわめて慎重に対応しています。ただし、そのようなケースは非常に少ないです」と話しています。
※次回へ続く。
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