藤野幸信さんが選ぶ「季節の贈り花」 今、この花を贈りたい! 「フルール トレモロ」オーナー 藤野幸信さんが“今贈りたい”おすすめの花をセレクト。その花を使った、新作ブーケ&アレンジメントをさまざまなバリエーションでお届けします。
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10月の花「紅葉と秋の実もの」
奥さまの誕生日にご主人から贈り花を。バラ‘シフォンベール’と‘ストロベリーモンローウォーク’にダイヤモンドリリー。淡いピンク系の中に、赤い実と黄色の花がついた紅葉ヒペリカム‘マジカルスカーレット’をたっぷり加えると、大人っぽい雰囲気に。タラスピオファリムなどフレッシュグリーンをあしらって。
これほど季節感がストレートに伝わる花材はありません!
春夏秋冬のいずれにも、その季節を象徴する花があります。そして、秋といえばあでやかに色づく葉と実。華やかな赤や黄色に染まった葉や実を見れば、一瞬で秋を感じ取れ、これほどまでに季節感を強くアピールできる花材は見当たりません。
ダリアやマムなど秋に美しく咲く魅力的な花もたくさんあるなか、葉や実のほうがさらにインパクトがあるというのも、この季節ならではの特徴です。紅葉や実ものは、促成栽培などで人工的に出回り時期を大きく変更できないため、秋の短い期間限定の花材というのもインパクトが強い理由ではないかと思います。
紅葉や色づいた実ものは、当然、秋の訪れが早い冷涼地から順に出荷が始まります。私がよく利用しているのが長野県飯山市の「JAながのみゆき」で、たとえば紅葉ヒペリカムであれば、9月下旬から出荷がスタートします。初めは緑が多めですが、徐々に赤が強くなっていく紅葉具合の変化もおもしろく、そのときどきの葉色に合わせた花合わせができます。同じ1枝に紅葉のグラデーション、赤や黄色に色づく実、そして黄色の花が同時についていることもあり、紅葉ヒペリカムだけでもブーケやアレンジに豊かな秋色を加えることができます。
さらに秋ならではの美しい紫色といえば、ムラサキシキブです。艶やかで気品がある紫色の実は、欧米では「ジャパニーズ・ビューティベリー」と名づけられ、庭木としてとても人気があるそうです。庭木・切り花ともに、近縁種のコムラサキがムラサキシキブの名前で流通しています。
紅葉は切り花でも種類豊富に出回るので、ぜひこの時期に利用したい花材です。小さな葉が真っ赤に染まるニシキギやモミジ、ドウダンツツジやブルーベリーなど、大ぶりの枝を切り分けずにそのまま部屋に飾りたくなるほど、ダイナミックな美しさです。冷涼地からの出荷の後、地元の広島産の紅葉が10月下旬から11月いっぱい出回るので、その時期の贈り花にアクセントとして加え、季節感をお届けするようにしています。
ほかにも赤やオレンジ色に染まるローズヒップや、小さいながらも真っ赤な実をたわわにつけるガマズミ、ピンクの実がかわいらしいマユミ、黄色の実で枝に表情があるツルウメモドキなど、秋には魅力的な実ものが出回り、それらが届いたお店の中は秋色に染まり、紅葉見物に出かける必要がないくらい賑やかな景色になります。
ムラサキシキブの紫色があまりに美しく、実だけを集めてリースにしてみました。紫色の花はほかにもたくさんありますが、こんなにつや感があるのはムラサキシキブだけだと思います。雅な雰囲気を感じさせる魅力的な紫は、贈り花に格調の高さをもたらします。
紅葉と秋の実ものを使ったブーケ&アレンジメント
地元の新聞社からの依頼で、地元広島で採れた紅葉と実ものだけを集めて大きなブーケを制作しました。ヤマモミジ、ヤマニシキギ、ドウダンツツジ、マユミ、アズキナシ、ツルウメモドキ、ブルーベリー。葉と実だけでこんなにきれいな秋色グラデーションになります。中国山地と瀬戸内海に囲まれた広島県は、枝ものの産地として全国的にも知られ、この時期には朝採りの新鮮な枝ものを利用できます。
錦のように華やかに紅葉することからニシキギ。燃えるように鮮やかな赤の美しさに感動すら覚えます。
ピンクのかわいらしい実をたわわにつけるマユミもニシキギの仲間。ピンクの部分は仮種皮で、熟してくるとパカッと割れて真っ赤なタネが現れます。
ムラサキシキブは1本の枝に少しずつ固まって実がつきます。その自然な姿を生かしたくて、枝を長めに残して飛び出すように加えたブーケです。バラ‘オール4ラブ+’、カラー‘エクスタシー’、草花リンドウ‘モダンピンクNO.8’に、これも秋ならではの実もの、ローズヒップ‘センセーショナルファンタジー’を加えて。娘さんたちからお母さまへ、誕生日を祝う花です。
ムラサキシキブには白実の品種もあり、シロシキブと呼ばれます。紫色の実とはまた異なる清楚さ、爽やかさを感じさせます。その白さを生かし、リシアンサス‘セレブリッチ ホワイト’とダイヤモンドリリーの白花と合わせました。ほかにスカビオサ‘プチグリーン’やルビーグラス、ロシアンオリーブ、ユーカリなどを使用。
「JAながのみゆき」産の紅葉ヒペリカム‘マジカルスカーレット’。これは葉に紅が差し始めた10月中旬の枝で、このあと葉はさらに赤みが増していきます。同シリーズで実色が深紅の‘マジカルレッド’、黒っぽい実の‘マジカルシーズン’なども出回ります。
秋の主役花の一つ、マム3種を合わせたアレンジ。11月に入り、葉全体が赤く染まった紅葉ヒペリカム‘マジカルスカーレット’を花と花のすき間を埋めるように加え、秋の雰囲気をさらに高めました。黄色のマムは‘アナスタシア イエロー’、黄緑色が‘スケーター’、白が‘ピンポンマム’のホワイト。
会社の新社屋完成のお祝いに、秋色のブーケをお届けしました。濃淡の赤に染まる紅葉ヒペリカムの葉にシンビジウム‘秋祭’を合わせると、何ともしゃれた雰囲気に。鮮やかな赤のバラ‘ブリランテ’、ベル型のクレマチス‘天使の首飾り’をアクセントに加え、ロシアンオリーブとユーカリをあしらってナチュラルに仕上げました。
真っ赤に色づいたノイバラの実を使い、プリザーブドのファーガスと合わせて秋のリースに。ファーガスは正式名称をスタビライズドファーガスといい、西洋ブナの葉を赤や黄色に染めたものが出回り、秋の贈り花に重宝します。ほかにブルニア・レッド、染めのユーカリも使用。和歌山のイタリアンレストランにお客さまからの贈り花です。
10月中旬から出回るローズヒップ‘センセーショナルファンタジー’。ノイバラより大きな実は存在感も抜群です。バラ‘オール4ラブ+’、スカビオサ‘イチゴミルク’、ケイトウ‘アスカセレクト ラビリンス’の濃淡ピンクと合わせたアレンジに。テマリシモツケやユーカリなどのリーフを添えると花色がさらに引き立ちます。お嫁さんの誕生日に、お義母さまからの贈り花です。
真っ赤な小さな実がびっしりついたガマズミもこの時期に出回ります。ガマズミは学名のビバーナムでも知られる人気の花木です。
女優さんの朗読会の舞台を飾る花にガマズミをたっぷり使って秋の雰囲気を盛り上げてみました。和歌シリーズのバラ‘珠繭’とカラー‘キャプテン ベンチュラ’、2種の白い花を赤い実と対比させたデザインに。デルフィニウム‘セリーネ ラベンダー’や秋色アジサイも加え、舞台映えするようにボリューム感を出しました。
藤野幸信/Yukinobu Fujino広島駅からほど近い段原の骨董通りにある「fleurs trémolo」(フルール トレモロ)オーナー。広島大学大学院理学研究科生物科学専攻を終了後、花の道に進んだ異色の経歴。感動する花束を多くの人に届けたいという思いから、市場からだけでなく自ら生産者情報を入手してお気に入りの花を集める。何種類もの花を使ったブーケは、エレガントでナチュラル。著書『大切な人への贈り花』も好評。
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