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【声に出してみたい古典】ダイナミックな論理展開!説法の名手による「悟りへの道」

2023.11.06

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11月・悟りへの道


(訳)大地のせいでつまずく者は、むしろ大地のおかげで起きることができ、道を行きながら迷子になる者は、むしろ道を行くことで行き方を悟る。永万2(1166)年に、説法の名手澄憲の作った表白(法会の趣旨を漢文体で綴ったもの)の一節である。表白は法会の中で読み上げられるものなので、独特なリズムをもつ美文で構成される。澄憲(1126~1203年)は、藤原通憲(みちのり)(信西(しんぜい))の息子で、唱導の流派、安居院流(あぐいりゅう)の祖である。

選・文=渡部泰明(日本文学研究者)

地面につまずくからといって、地面がなければ立ち上がれはしない。道に迷うからといって、道を進まなければどう行けばよいのかもわかりはしない。そう述べた後には、真理への妨げになる和歌などの文芸も、だからこそ真理へと至るより所となるのだ、という結論へと至る。

文芸を迷妄の原因となると見て否定する立場から、文芸があるために悟りに近づくと、積極的に肯定する立場へと反転する、ダイナミックな論理展開だ。もちろんそれには、仏法と縁を結ぶことが必須の条件になる。経典の中にしばしば見える論理だが、中世日本の文芸に関わって、愛用された。
国文学資料館館長の渡部泰明先生による朗読と解説を音声でお楽しみください!


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この記事の掲載号

『家庭画報』2023年11月号

家庭画報 2023年11月号

イラスト/髙安恭ノ介

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