クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第38回 武満 徹『ノヴェンバー・ステップス』
イラスト/なめきみほ
武満 徹の名を世に知らしめた出世作
今日10月8日は、日本を代表する作曲家・武満 徹(1930~96)の誕生日です。
東京の本郷に生まれた武満徹は、父親の仕事に伴い生後1か月で満州に渡った後、小学校入学のために1人で帰国。その後学徒動員に駆り出された折に、手回し蓄音機から流れるシャンソン『パルレ・モア・ダムール(聞かせてよ、愛の言葉を)』に運命的な出会いを感じて作曲家になることを決意します。
1957年に作曲した『弦楽のためのレクイエム』は、日本国内ではまったく評価されませんでしたが、来日中のストラヴィンスキーが偶然耳にして絶賛し、“世界の武満”への足がかりとなったのです。
こうして世に出た武満の名を不動のものとしたのが、代表作“琵琶、尺八とオーケストラのための作品”『ノヴェンバー・ステップス』です。1967年11月9日に、ニューヨークで行われた初演は今や伝説。その詳細については、初演に参加した“不世出の天才琵琶奏者”鶴田錦史の伝記『さわり』(佐宮 圭著)をご参照あれ。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。