クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第40回 ヴェルディ オペラ『ナブッコ』〜「わが想いよ金色の翼に乗って」
イラスト/なめきみほ
“イタリア第2の国歌”として愛される名曲を生み出したきっかけとは
今日10月10日は、イタリア最大のオペラ作曲家ジュゼッペ・ヴェルディ(1813~1901)の誕生日です。
今や19世紀を代表するオペラ作曲家とたたえられるヴェルディの人生はまさに波乱万丈。最初に手がけたオペラ『オベルト』は、ミラノで成功を収めたものの、2作目の『一日だけの王様』が失敗に終わり、追い打ちをかけるように妻と幼子2人を相次いで亡くすという悲劇に見舞われます。あまりの衝撃に打ちひしがれ、作曲家をやめようと思いはじめていたヴェルディのもとに、偶然出会ったミラノ・スカラ座の支配人メレッリから新作依頼が舞い込みます。
まったくやる気のないヴェルディでしたが、その台本に書かれた「わが想いよ金色の翼に乗って」の一言によって、再び作曲への意欲を取り戻したのです。わずか3か月で完成させたこの作品が、ヴェルディの出世作となったオペラ『ナブッコ』です。そして、名高い合唱「行けわが想いよ金色の翼に乗って」は、イタリア第2の国歌と呼ばれて愛される名曲です。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。