クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第41回 ヘンデル『司祭ザドク』(ジョージ2世の戴冠式アンセム)
イラスト/なめきみほ
チャンピオンズリーグのテーマ曲の元になった、英国王ジョージ2世の戴冠式アンセム
今日10月11日は、ジョージ2世(1683~1760)の戴冠式が行われた日です。(1727年)英国王ジョージ2世についての記憶は、バロック時代の作曲家ヘンデル(1685~1759)とともにあります。
ドイツ生まれのヘンデルは、1727年に英国の市民権を取得。後年はロンドンで過ごしながら、英国の作曲家として数々の名曲を残します。その彼が、時の国王ジョージ2世の戴冠式のために作曲した作品が『司祭ザドク』です。ヘンデルならではの壮麗な音楽は、その後も新国王の戴冠式のたびに演奏され続けたほか、UEFA欧州サッカー連盟主催の「チャンピオンズリーグ」では、同曲のアレンジがテーマ曲に採用されているという名曲です。
そのジョージ2世はといえば、ヘンデルの代表作オラトリオ『メサイア』のロンドン初演(1743年)の際に、「ハレルヤ・コーラス」に感動して立ち上がり、観客総立ちのスタンディングオベーションを起こした張本人。以後“「ハレルヤ・コーラス」では起立する”という風習も、今や懐かしい思い出です。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。