クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第42回 プッチーニ オペラ『トゥーランドット』〜「誰も寝てはならぬ」
イラスト/なめきみほ
稀代のスーパースター最大のヒット曲に浸る
今日10月12日は、イタリアのテノール、ルチアーノ・パヴァロッティ(1935~2007)の誕生日です。数々の名唱を遺したパヴァロッティの代名詞とたたえられる名曲が「誰も寝てはならぬ」。プッチーニ(1858~1924)のオペラ『トゥーランドット』を彩る名アリアです。
中国を舞台としたこの作品は、求婚者に謎をかけ、解けない者は殺してしまう“氷の姫君”トゥーランドットと、その謎に挑む流浪の王子カラフの姿を描いたプッチーニ最後のオペラです。
有名なアリア「誰も寝てはならぬ」は、“20世紀最大のクラシックイベント”と称された「3大テノール」の初舞台となった1990年のサッカー・ワールドカップ・イタリア大会決勝前夜で歌われたほか、2006年の「トリノオリンピック」開会式においてパヴァロッティが歌ったのもこの曲です。
さらには、同オリンピックのフィギュアスケートで、荒川静香さんが金メダルを獲得した際の使用曲としても話題となったのですが、曲名が「イナバウアー」と混同されていたのには思わず笑ってしまいました。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。