クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第45回 R・シュトラウス 交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』
イラスト/なめきみほ
強烈な冒頭部分だけが圧倒的に有名な珍名曲
今日10月15日は、ドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェ(1844~1900)の誕生日です。
ワーグナーとの確執をはじめ、同時代の音楽家たちに大きな影響を与え続けたニーチェ。中でも、音楽作品にその名を残す著作が1883年から1885年にかけて著された大作『ツァラトゥストラはかく語りき』です。
ツァラトゥストラとは、古代ペルシャのゾロアスター教の教祖のことで、4部からなるその内容は、ニーチェの主義主張が独特の文体で描かれた「哲学的叙事詩」。この作品に触発されたR・シュトラウス(1864~1949)は、自らのイメージに基づいた交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』を作曲したのです。
そして、この曲を一躍有名にしたのが、スタンリー・キューブリック監督による1968年公開の映画『2001年宇宙の旅』でした。メインテーマ的に使われた同曲冒頭部分のインパクトは抜群。舌を噛みそうな曲名もなんのその、“始まり”のみを比較すれば、クラシック史上もっとも有名かつ人気の高い名作となったのです。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。