ゲラン サステナビリティ チーフ オフィサー
セシル・ロシャールさん
今年5月、ゲランのトレーサビリティプラットフォーム「ビー リスペクト(BEE RESPECT)」の日本版がローンチ。スキンケアやメイクアップ、フレグランス、限定品をのぞくすべての製品の成分や産地、パッケージの構成要素、輸送、販売、使用後のリサイクルにいたるまで、製品にまつわる全情報を収集できるという、かつてないユニークな取り組みです。
「私たちが“製品のライフサイクル”と呼ぶ、『その製品がいつ、どこで、誰によって作られたのか』をより幅広く、よりクリアに共有するためのツールです。ゲランの製品が環境と社会へ与える影響を継続的に改善するために不可欠な情報源でもあります。なぜそこまでするのかと問われますが、これは使命感ではなく、また市場に後押しされるということでもなく、まず先行して挑戦することが大事で、ラグジュアリーは外に開かれているべきと考えました。フランスで2019年に開始したときは、製品の舞台裏を見せるということは、ラグジュアリーの常識に反することで少し勇気がいりましたが、リリースしてみると、お客さまの、それからジャーナリストたちの反応も素晴らしく、ゲランは隠し事が何もないメゾンなのだと好意的に受け止めてくださいました」
成分のみならず、構成要素が多岐にわたるため、サステナビリティの実現が難しいとされていたビューティブランドにおいて、ゲランが先駆者であり続けている理由を伺ってみると、「1828年の創業から200年近く続くメゾンの歴史にある」とセシルさんは言います。
「ゲランと自然の関係は非常に深く、その自然からの恩恵を還元し守ることは必然の選択でした。そしてメゾンを象徴するミツバチです。ミツバチは、『再生』を意味します。ゲランのフレグランスに必要な花や植物も、彼らが受粉してくれないと何も始まりません。創業当初より、植物や養蜂のエコシステムが永続的に保証されるかどうかが、製品の品質に関わることを深く理解していたので、持続可能な調達を先行して行っていたのです。ゲランは16年前からサステナビリティ戦略をスタートしていますが、私の前責任者は実はマスターパフューマーであるティエリー・ワッサーでした。世界中を旅し、常に自然そのものと深い関係にあるものですから。とてもゲランらしいエピソードです」
「もう一つ、これまで取り組んできた活動の中で、最も誇りに思っていることを伝えさせてください。フレグランスの原材料のほとんどを占めるアルコールを、オーガニックのアルコールに変更したことです。これまでは、ビーツ由来のもの使っていましたが、ロックダウンの時期に、フランス政府が農業者に対して、例外的に農薬を使っていいという許可を出しました。右手ではミツバチを保護すると言って、左手ではミツバチを殺す可能性のある農薬を使うことは両立しないですよね。 私たちとしては、農薬を使わない有機ビーツ由来のアルコールの調達を決めたのです。最初は「アクア アレゴリア」からスタートしましたが、今後はすべてのフレグランス製品がオーガニック アルコールに切り替えられます」
ユーザーが化粧品を選ぶ新しい基準ともいえる「サステナビリティ」。今まさに、転換期を迎え、今後もこの取り組みが加速していくことは間違いありません。
「読者のみなさまには、ご自身が買うものに対して関心を持つことの大切さをメッセージしたいと思います。例えばスキンケア製品を選ぶときも、どのような効果があるかだけではなく、どういった材料が使われ、どういった製造工程になっているのかも含めて、好奇心を持って製品を選んでいただきたいのです。“購買力”という言葉があるように、お客さまには力があるわけですから、その力を使うには、知識が必要だと思います。私たちのミツバチの保全活動においても、ミツバチを守るために、まず彼らを知ることから活動を始めました。知らないものを愛することができない、守ることもできません。まず知ること、自分と関わるものへの知識を蓄えることが、守ることに繋がる。それがサステナビリティへの一つのアクションになるのです」
お問い合わせ/ゲランお客様窓口
フリーダイヤル 0120-140-677
URL:https://www.guerlain.com/jp/
取材・文/今井田留実(家庭画報本誌)