クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
連載一覧はこちら>>
第46回 プーランク オペラ『カルメル会修道女の対話』
イラスト/なめきみほ
フランス革命を描いたオペラの衝撃
今日10月16日は、フランス革命によって断頭台の露と消えた、王妃マリー・アントワネット(1755~93)の命日です。
「自由・平等・友愛」を旗印としたフランス革命は、歴史上最も重要な出来事の1つとして、ディケンズの『二都物語』や、ユーゴーの『レ・ミゼラブル』など、さまざまな芸術作品に描かれています。クラシックにおいては、プーランク(1899~1963)のオペラ『カルメル会修道女の対話』が印象的です。
フランス革命末期の恐怖政治吹き荒れるフランスを舞台に、時代に翻弄された修道女たちが断頭台に上るまでを描いたこの物語からは、生と死、そして信仰とはなにかといった普遍的なテーマが投げかけられます。
そして物語に寄り添うプーランクの音楽が、このシリアスな物語に拍車をかけます。革命広場で、サルヴェ・レジーナ(キリスト教聖歌)を歌う修道女たちが1人ずつ断頭台にかけられ、歌声が徐々に消えていく最後のシーンは、オペラ史上屈指のフィナーレでしょう。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。