クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第49回 エルガー 行進曲『威風堂々』第1番
イラスト/なめきみほ
英国第2の国歌にまつわる物語
今日10月19日は、英国の作曲家エルガー(1857~1934)の行進曲『威風堂々』の初演日です。
皆さんは「第2の国歌」と聞いてどのような曲を思い起こすでしょう。代表的なところでは、イタリアの『行け、我が想いよ、金色の翼に乗って』、フィンランドの『フィンランディア(フィンランド讃歌)』、そして英国の『威風堂々(希望と栄光の国)』といった作品が、今も熱い思いを込めて歌い継がれています。
これらはすべてクラシックの名曲であり、当然のことながらその背景には物語があります。エルガーの『威風堂々』においては、この曲を聴いて感激した国王エドワード7世の提案によって中間部の旋律に歌詞がつけられ、『希望と栄光の国』という名で歌われるようになったのがきっかけです。
現在においては、英国最大のクラシック音楽祭「BBC Proms」のラストナイトを飾る大合唱でも有名なこの曲。タイトルは、シェイクスピアの『オセロ』第3幕第3場に登場するオセロの台詞の引用というのも英国らしい逸話です。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。