クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第50回 ショパン『ポロネーズ』第5番
イラスト/なめきみほ
「だって彼は天才よ」の一言を裏付ける名演奏
今日10月20日は、ユーゴスラヴィア出身のピアニスト、イーヴォ・ポゴレリッチ(1958~)の誕生日です。
彼の存在を世界に知らしめたのが、1980年に行われた第10回「ショパン国際ピアノコンクール」でした。ショパン(1810~49)の命日10月17日を軸に、5年に1度ポーランド・ワルシャワで開催される同コンクールは、過去の優勝者に、ポリーニ、アルゲリッチ、ツィメルマンら、今をときめくクラシック界のスターが名を連ねる“クラシック界最高の登竜門”。
ところがポゴレリッチは、このコンクールに落選したことで名を挙げた変わり種です。彼の本選落選に抗議して審査員を辞任したマルタ・アルゲリッチの「だって彼は天才よ」という一言は今や伝説。その結果、ポゴレリッチは、優勝者ダン・タイ・ソン以上に注目を集める存在となったのでした。
コンクール時に彼が演奏したショパン『ポロネーズ第5番』の映像は今見ても新鮮そのもの。アルゲリッチの目利きの正しさを再認識する名演です。
※この音源はコンクールの際の録音ではありません
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。