クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第51回 オッフェンバック オペレッタ『天国と地獄』序曲
イラスト/なめきみほ
“とにかく明るいオペレッタ”の生みの親
今日10月21日は、オッフェンバック(1819~80)のオペレッタ『天国と地獄(地獄のオルフェ)』の初演日です。
ドイツ・ケルンに生まれたオッフェンバックは、1833年に、父親・兄とともにパリへ出て、パリ音楽院でチェロを学びます。“チェロのリスト”とたたえられた実力は素晴らしく、たちまちオペラ・コミック座のチェロ奏者の座をつかみ取ります。
しかし作曲家志望のオッフェンバックは、最初のオペレッタ『パスカルとシャンポール』を発表するも成功せず。その後作曲から離れてチェリストとして活躍していたところ、1855年のパリ万国博覧会時にチャンスが到来。自らの作品を理想的に上演するための劇場を開設し、オペレッタを次々に発表したのです。
そしてついに、1858年公開の『天国と地獄』が、228回上演という大成功を収めてパリを席巻。ロッシーニをして“シャンゼリゼのモーツァルト”とまで言わしめる存在となったのでした。日本では運動会の定番にしてカステラのCMでおなじみの名曲ですね。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。