一生ものの時計——それは自分の心臓の鼓動とともに人生を刻む、大切なパートナー 【もう迷わない! ジュエリー&ウォッチ選び】 第7回「ヴァシュロン・コンスタンタン」 ジュエリーや時計は「一生もの」。では私たちは、いつになったら「一生もの」と巡り合えるのでしょう? 40代以降は、自ら「一生もの」に出会う旅に出る時期だと、スタイリストのおおさわ千春さんは言います。この連載では、毎月、おおさわさんと、家庭画報.com編集長の鈴木が人気のジュエラーを訪ね、今の、そしてこれからの人生を共に歩むジュエリー&ウォッチを探します。
第7回は世界最古のマニュファクチュール「ヴァシュロン・コンスタンタン」を訪問。高級機械式時計の魅力に開眼します。
前回の記事を読む>> 空が高くなり、涼やかな風が銀座の街を抜けていく初秋のある日。おおさわさんと鈴木が扉を開けたのは「ヴァシュロン・コンスタンタン 銀座本店」。高級時計に軽い緊張感を覚えつつ、今回の一生もの探しがスタートしました。
日本の江戸後期に、ヴァシュロン・コンスタンタンはスイスで誕生しました おおさわ: 世界最古のマニュファクチュールと聞くと、さすがにハードルが高くて、今日は緊張でおとなしくなってしまいそうです。
鈴木: 本当ですか? では緊張をほぐすためにクイズから始めましょう。さて、おっしゃるとおり、ヴァシュロン・コンスタンタンは世界最古のウォッチメーカーとして1755年に創業しましたが、では1755年って、日本では何時代だと思いますか?
おおさわ: えっ! えーっと、江戸時代でしょうか?
鈴木: ご名答です。江戸の後期、第9代将軍・徳川家重の治世の頃です。ちなみに第8代は徳川吉宗公なのですが、おおさわさん、聞き覚えがありませんか?
おおさわ: 「暴れん坊将軍」ですね! あの時代劇、大好きでした(笑)。
銀座本店に入って正面の壁には、藁のマルケトリー(象嵌)が。蒸した藁をブルーに着色したものを用いた象嵌細工で、世界中のヴァシュロン・コンスタンタンのブティックで壁面として使用されていますが、天然の藁を使うため、色や風合いが店舗ごとに異なります。
鈴木: そんな時代にヴァシュロン・コンスタンタンがスイスのジュネーブで創業して268年も経っているなんて、歴史って面白いなぁと思いませんか?
おおさわ: 本当に、同時代とは思えないですね。
鈴木: あのルーヴル美術館の開館が1793年ですから、ヴァシュロン・コンスタンタンのほうが年上ということになりますね。
おおさわ: 今日は時計ブランドだけに、壮大な時間のトークから始まりましたねぇ。
アートへの造詣が深いヴァシュロン・コンスタンタン。文化を継承し、未来へつなぐことを願って 鈴木: ルーヴル美術館の話が出たので、少しだけお話ししておくと、ルーヴルとヴァシュロン・コンスタンタンは互いのもつ文化や技術を守り、継承していくためのパートナーシップを結んでいるそうです。その1つが
「A Masterpiece on the Wrist(あなたの腕に傑作を)」というプロジェクト 。ヴァシュロン・コンスタンタンの特別なお客様が、ルーヴル美術館に収蔵されている作品から好きなものを1点選び、メゾンの時計師がその作品をエナメルで時計の文字盤に描くというもの。売上げは、ルーヴル美術館の作品修復のために寄付されたそうです。
おおさわ: 素晴らしいパートナーシップですね。大きなアートをダイヤルに封じ込めるというその技術力にも驚きます。
2023年春にお披露目された最新の「A Masterpiece on the Wrist(あなたの腕に傑作を)」の制作過程。あるお客様のオーダーにより、ルーベンス作『アンギアーリの戦い』を、文字盤にエナメルで描き出しました。
一人ひとりの職人の技が生み出す、オートクチュールのような時計 鈴木: さて、本日ご紹介する1本目の時計は、私が着用している「エジェリー」。2020年に満を持して登場した、レディスモデルです。
おおさわ: 268年の歴史の中では、まだまだ新人さんですね(笑)。
鈴木: すごく素敵だなと思ったのは、エジェリーにはインターチェンジャブルストラップがついていること。モデルによって色は様々で、さらに追加でカスタマイズベルトを購入することもできるそうです。
おおさわ: 鈴木さんが今つけているのは?
鈴木: これはカスタマイズです。季節に合わせて秋っぽいワインレッドにしてみました。ストラップはどれもワンタッチで着脱できて、とても便利です。
おおさわ: 装いに合わせて自分で替えられる気軽さが、とても今っぽい!
エジェリーにはムーンフェイズ、オートマティック、クォーツがラインナップ。写真は「エジェリー・オートマティック」(PG×ダイヤモンド、ベゼルに58個のダイヤモンド、リューズにムーンストーン、アリゲーターレザーのインターチェンジャブルストラップ3本付き/ラズベリーピンク・ナイトブルー・キャンディッドチェスナッツ、ケース径35㎜)488万4000円/ヴァシュロン・コンスタンタン
カスタマイズできるストラップは色も素材も多種多様。
鈴木: エジェリーのデザインはオートクチュールに触発されているそうですね。
おおさわ: たとえばダイヤル部分に施されたプリーツのようなパターン、精緻にセッティングされたダイヤモンド、そして流麗なアラビア数字などに、その思いが見てとれると思います。
鈴木: 洋服はファブリックで、時計は金属なので、質感はまったく違いますが、オートクチュールという共通点についてどう思われますか?
おおさわ: 確かに素材も完成形も異なりますが、一流の“もの作り”というのは結局みんな同じなんだと、私は思っています。細分化された一つひとつのパーツがあり、職人一人ひとりにそれぞれの役割がある。オートクチュールであればドレスを作る職人とスーツを作る職人は違うし、刺繍をする職人とレースを編む職人も違う。そういう個の“作る力”が結集して、1着のオートクチュールが生まれるわけです。それは時計も同じことですよね。
鈴木: なるほど……。実は今ここに、ヴァシュロン・コンスタンタンが約100年前に作ったという懐中時計があるのですが。
おおさわ: すごく貴重なものですね。
世界各国の旗艦店での取り扱いで、日本では銀座本店で購入できます。
鈴木: 時計技術者が修復・メインテナンスを行い、経年に見合う風合いに仕上げてあります。購入もできるそうですよ。
おおさわ: この懐中時計もオートクチュールとして作られたものですよね。お客さまの要望に応えてこの大きさになり、文字盤になり、デザインになった。2世紀半に及ぶヴァシュロン・コンスタンタンの歴史のほとんどがオーダーメイドのマニュファクチュールで、既製品が店頭に並ぶようになったのは、ごく最近の話のはずです。
鈴木: 1755年からずっと、まさに「あなただけの時計」を作ってきたということですね。
レディスモデル初の自動巻トゥールビヨン「トラディショナル」。時を刻む音に自分の鼓動を重ねて おおさわ: 私は今日、レディスモデルで初めてトゥールビヨンを搭載したという「トラディショナル」を着用させていただきました。何とも言えない重みと、この時を刻む機械の動き……。うまく表現できませんが、自分の鼓動と時計が一体化しているような感覚です。
「トラディショナル・トゥールビヨン」(PG×ダイヤモンド、インターチェンジャブルストラップ2本付き/グレーのサテン・グレーのアリゲーターレザー、ケース径39㎜)2530万円/ヴァシュロン・コンスタンタン
鈴木: トゥールビヨンは「渦」という意味ですが、重力の影響で時間に誤差が出ないようにする仕組みのことで、そこで使われている渦状のヒゲぜんまいからそう名づけられたとのこと。
おおさわ: 文字盤の一部が丸くくりぬかれていて、機械の動きが見えるのですが、ずーっと見ていられますね。不思議な気分です。
鈴木: 部品の1つがマルタ十字の形になっているのがわかりますか?
おおさわ: あ、わかります。これはヴァシュロン・コンスタンタンのブランドマークですね?
鈴木: そうなんです。この部品の形から、マルタ十字をロゴマークにしたそうですよ。なお、この銀座店には、時計の技術者が常駐しています。修理やオーバーホールなどに対応しているのですが、ほら、見てください。電子顕微鏡内蔵のカメラを使って、時計の内部がタブレットと大型モニターに映し出されるんです。
時計技術者によるサービスが受けられるカウンター(上)。カウンターのタブレットと、VIPサロンの壁面に取り付けられたモニターに、作業の様子が映し出されます。
おおさわ: これはたまらないですね! 自分の時計の心臓部が見られるなんて!
鈴木: オーナー冥利に尽きますよね。
おおさわ: いろいろと見てきましたが、このブランドの長い歴史やアートとの関わり、クラフツマンシップなどをきちんと知ることができて初めて、この時計の持ち主になれるというか、なることを許されるんだな、と思い知りました。
鈴木: ひと目惚れで買うような時計ではない、ということですか?
おおさわ: そうです。時計が「あなたに選んでもらえてうれしい」と喜んでくれるような自分にならないと。
鈴木: 人生は長いようで短い。私も頑張って、ヴァシュロン・コンスタンタンの時計に認めてもらえるような人になりたいです。
エジェリーコレクションをもっとご紹介します ブラックエナメルのダイヤルに、合計4ct以上のダイヤモンドをセッティング。2人が魅せられた、ムーンフェイズの「エジェリー・クリエイティブ・エディション」。ブラーノ島のレースからインスパイアをうけ、まつ毛より細いホワイトゴールドでレース模様を描き出しました。メティエ・ダール(芸術的な手仕事)のすべてが注ぎ込まれています。「エジェリー・クリエイティブ・エディション」(WG×ダイヤモンド、リューズにローズカットダイヤモンド、インターチェンジャブルストラップ2本付き/黒のカーフ、黒のアリゲーターレザー、ケース径37㎜)1689万6000円(予価)/ヴァシュロン・コンスタンタン
5ct以上のダイヤモンドがふんだんにちりばめられた、ラグジュアリーな1本。「エジェリー・ムーンフェイズ・ダイヤモンドパヴェ」(PG×ダイヤモンド、インターチェンジャブルストラップ2本付き/ナイトブルーのアリゲーターレザー、ナイトブルーのサテン、ケース径37㎜)1170万4000円/ヴァシュロン・コンスタンタン
〈上〉トープカラーが上品。「エジェリー・ムーンフェイズ」(PG×ダイヤモンド、リューズにムーンストーン、トープカラーのチェンジャブルストラップ3本付き/アリゲーターレザー・サテン・キルティングラムスキン、ケース径37㎜)563万2000円 〈下〉ピンクゴールドの柔らかい輝きと、手首に感じる重みに高級感が漂います。「エジェリー・ムーンフェイズ」(PG×ダイヤモンド、リューズにムーンストーン、ケース径37㎜)814万円/ともにヴァシュロン・コンスタンタン
動画もぜひご視聴ください VIDEO ヴァシュロン・コンスタンタン 銀座本店 東京都中央区銀座4-3-9
電話 03-6862-1755
営業時間 12時~20時
●お問い合わせ
ヴァシュロン・コンスタンタン
フリーダイヤル 0120-63-1755
URL:
https://www.vacheron-constantin.com/ ・
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