クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第57回 パガニーニ『24のカプリース』
イラスト/なめきみほ
“悪魔に魂を売った”ヴァイオリニストの真骨頂
今日10月27日は、ヴァイオリンの鬼才ニコロ・パガニーニ(1782~1840)の誕生日です。
イタリアの港町ジェノヴァに生まれたパガニーニは、“音楽史上最大のヴァイオリニスト”とたたえられる作曲家です。彼が開発したヴァイオリンの新技法や超絶技巧があまりにも常識の範囲を超えていたため、“悪魔に魂を売った”とまで言われ、コンサートにおいては、彼に普通の人間のように足があるかどうかを確かめようとする人までいたというのですから驚きです。
その影響力は凄まじく、演奏を聴いたリストは「私はピアノのパガニーニになる!」と叫び、ウィーンではシューベルトが、そしてドイツではシューマンが大きな影響を受けたほか、詩人ゲーテやハイネがその演奏を聴いた感銘を書き記しています。
作曲家パガニーニの代表作『24のカプリース』は、J・S・バッハの『無伴奏ヴァイオリンソナタとパルティータ』全6曲や、ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ全10曲と並ぶ、ヴァイオリン音楽の最高峰に数えられる名曲です。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。