クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第59回 モーツァルト オペラ『ドン・ジョヴァンニ』
イラスト/なめきみほ
モーツァルトが描いた“稀代の色事師”ドン・ジョヴァンニの最後
今日10月29日は、モーツァルト(1756~91)のオペラ『ドン・ジョヴァンニ』の初演日です。
『フィガロの結婚』の大成功に気を良くしたプラハの劇場から新作の依頼を受け、前作同様台本作家ロレンツォ・ダ・ポンテ(1749~1838)とのコンビによって手がけられた『ドン・ジョヴァンニ』は、モーツァルトの魅力のすべてが詰め込まれた名作です。
1787年2月に開始された作曲作業は順調に進み、なんと同年10月29日には、プラハのエステート劇場で初演されています。仕上がりの素晴らしさはさすがモーツァルト。聴いた瞬間に物語の中へと引きずり込まれそうな序曲冒頭の和音から、稀代の色事師ドン・ジョヴァンニが地獄に落ちる最後のシーンに至るまで、そこかしこにちりばめられた音楽のなんと美しく印象的なことでしょう。
物語の舞台セビリアは、『ドン・ジョヴァンニ』『フィガロの結婚』のほか、ロッシーニ『セビリアの理髪師』、ビゼー『カルメン』の舞台となっていることにもご注目を。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。