クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
連載一覧はこちら>>
第62回 ショパン ワルツ第6番『子犬のワルツ』
イラスト/なめきみほ
ショパン作品への扉を開く人気曲
今日11月1日は、犬の日です。“犬にまつわるクラシックの名曲”の中で最も有名な作品といえば、ショパン(1810~49)の『子犬のワルツ』でしょう。『ワルツ第6番変ニ長調作品64-1』という正式名称を持つこの作品は、ピアノ学習者が最初に親しむショパン作品でもあります。
残された作品のほとんどがピアノのための音楽であることから“ピアノの詩人”と呼ばれるショパン。その扉を開く作品が『子犬のワルツ』となれば、愛犬家にとって誇らしいことこの上なし。ちなみに、『ワルツ第4番ヘ長調作品34-3“華麗なる円舞曲”』が『猫のワルツ』と呼ばれることもありますが、こちらはそれほど浸透していないことにもニンマリでしょうか(笑)。
この愛らしい曲が『子犬のワルツ』と呼ばれるようになった理由は、恋人ジョルジュ・サンドが飼っていた子犬が、自分の尻尾を追いかけてぐるぐる回る様子を音楽で描いたためだと伝えられています。作曲されたのは1847年頃。子犬を見つめるショパンの優しい眼差しが目に浮かぶような名曲です。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。