腸活に注目が高まる昨今、腸の本来の力や働きをさらに引き出すために、毎日の生活でできることとは? 免疫力・排出力・メンタル力、3つのポイントから、専門医にうかがいます。
※この記事は、発売中の『からだにいいこと』2023年12月号より一部抜粋・再編集しています。
教えてくれたのは…江田 証(えだ・あかし)先生
「脳との関係に注目が集まっている腸ですが、脳だけでなく、あらゆる臓器と関係し合っていることがわかってきています。このことは『臓器連関』と呼ばれ、さまざまな研究結果が発表されています」と、医師の江田 証先生。
一見、関係ないような心身の不調も実は腸の影響を受けているということがとても多いそう。「最近では、筋肉の量や皮膚の疾患、疲労も腸と関わりがあることがわかってきました。体のトラブルを解消するだけでなく、より健康で、若々しい毎日を送るためにも注目してほしいのが腸力です」
腸に関する研究は日々進み、新たな働きや他臓器との関係などの発見が続いています。
〔その1〕腸は多くの臓器と連携し健康を維持している
「腸の働きはいろいろな臓器と関連し合っている」という意味の「臓器連関」という言葉は、近年の医学界の注目ワード。全身の健康や若々しさの維持に腸は大きく関わっています。
脳→ネットワークを駆使して腸と情報を交換。互いの状態が影響し合う。
心臓→心拍数や血液の流れにより、腸に届く血液量や腸の働きも変化。
肺→深い呼吸は自律神経を整え、横隔膜とともに腸の動きを活発に。
肝臓→胆汁を作ることで、小腸で吸収した栄養を一時貯蔵している。
腎臓→血中の老廃物を尿として排出。腸には腎臓の働きを保護する細菌も。
副腎→ストレス緩和ホルモン・コルチゾールを分泌。腸内の炎症も抑える。
〔その2〕いい腸内細菌が筋肉を増やす
立ったり、姿勢を保ったりする抗重力筋の活動には、その90%が腸で作られるセロトニンが不可欠。腸内で善玉菌を増やし、セロトニンを分泌されやすい状態に整えることで、活動量とともに筋肉量が増えるのです。
〔その3〕腸内環境を良くすると骨まで丈夫になる
骨粗しょう症の原因の1つが骨を溶かす細胞の存在ですが、腸内で善玉菌の酪酸(らくさん)菌が増えるとこの細胞の働きを抑えられることがわかっています。更年期以降の女性の骨粗しょう症対策として注目されている腸の働きの1つ。
〔その4〕腸皮膚相関により、腸の改善効果が皮膚にも
小腸内細菌増殖症(SIBO シーボ)は、皮膚が赤くなる酒さ(しゅさ)や乾癬(かんせん)などの皮膚疾患を引き起こすことが。皮膚が腸の状態に影響を受ける腸皮膚相関により、腸の状態が改善することでこれらの疾患が改善することがあります。
〔その5〕腸の菌の多様性が疲れにくい体を作る
アスリートの腸内細菌は種類が多く、この「腸内の菌の多様性」が、疲れにくい体作りや疲労回復を助けていると考えられます。アスリートではなくても、多くの種類の食品を摂ることで腸内細菌は多様化できます。
〔免疫力〕大腸内の酪酸(らくさん)菌を増やすのがポイント
酪酸は腸内細菌が乳酸を原料にして作る短鎖脂肪酸の一種で、腸内で酪酸菌を増やして免疫力を高めます。海藻類、きのこ類など、酪酸を増やす食品を意識して摂り、免疫力の高い体作りを。
さらに、腸内細菌の多様性を高め有害物質をブロック!
酪酸菌のエサになる食べ物腸の細菌には有害物質が入り込まないようにブロックする働きが。豊富な種類の食品を摂り、腸内細菌を多様化させることでブロック力はより強固に。
〔排出力〕「筋トレ=腸トレ」でぜん動運動を活発に筋肉を増やすことは、ボディーラインを整えたり、代謝を上げたりする以外にも、腸の排出力を高めることにつながります。特にインナーマッスルである骨盤底筋群や腸腰筋への刺激が効果的(※腸腰筋を鍛えるエクササイズを次回ご紹介します)。
〔メンタル力〕「認知行動療法」で腸が傷つくのを防ぐ
ネガティブな思考はストレスによって腸を傷つけがち。「認知行動療法」を使って極端な思考グセを変えると、腸の働きが正常に保たれます。ゆっくり1本1本の指をみつめ思考を整理しましょう。親指は自分が持っている考え方、 人差し指は人を責める理由、中指はバランスのとれた反論、薬指は建設的な対策、小指は小さな行動の第一歩。このように思考を整理することで、腸を傷つける悪循環を断ち切れます。
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この記事は、『からだにいいこと』2023年12月号の内容を抜粋・再構成したものです。 監修/江田 証 イラスト/山中玲奈 コウゼンアヤコ