クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第64回 ストラヴィンスキー『火の鳥』
イラスト/なめきみほ
巨匠同士の邂逅を演出したバレエ作品
今日11月3日は、手塚治虫(1928~89)の誕生日です。『鉄腕アトム』『ジャングル大帝』『ブラック・ジャック』など、漫画史に残る名作の数々を残した手塚治虫は、まさに“漫画の神様”とたたえられるにふさわしい存在でした。
その手塚治虫のライフワークとされる大作『火の鳥』は、ストラヴィンスキー(1882~1971)のバレエ『火の鳥』を観劇したことがきっかけで誕生したと伝えられる名作です。この2人の巨匠の邂逅が、1975年に発表された冨田 勲のアルバム上で実現します。最新のシンセサイザーサウンドによって新たな生命を吹き込まれた『火の鳥』のLPジャケットを手塚治虫が手がけたのです。
ちなみに手塚治虫の絶筆となった作品『ルードウィヒ・B』は、手塚治虫がこよなく愛し、自分に似ているところがあると語っていたベートーヴェンがモデルの作品です。仕事部屋にピアノを置き、気分転換に弾いていたといわれる手塚治虫の脳裏には、きっとさまざまなクラシック音楽が流れていたことでしょう。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。